2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14710295
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
青木 博史 京都府立大学, 文学部, 助教授 (90315929)
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Keywords | 語 / 句 / 包摂 / 拡張 / 右側主要部 / 用言 |
Research Abstract |
本年度における研究の業績は以下のとおりである。 (1)論文「古代語における「句の包摂」について」『国語国文』71巻7号(京都大学,2002年7月) (2)論文「「〜サニ」構文の史的展開」『日本語文法』3巻1号(日本語文法学会,2003年3月) (1)では,「語」の内部に「句」が包み込まれる「句の包摂」現象について,特に用言句の包摂に注目して考察を行った。古代語における「句の包摂」は,接続詞的なものと形容詞的なものの2種に分けられる。前者は「ニ」を伴うもので,「〜サ」「〜サマ」等の形式が挙げられる(ex.声が近さに)。後者は「ナリ」を伴うもので,「〜ガホ」「〜ヤウ」等の形式が挙げられる(ex.夏を待ち顔なり)。そして,この2種の分類は現代語においてもそのまま適用できると考えられる。すなわち,接続詞的なものとしては,「〜しなに」「〜がてら」等の形式が挙げられ(ex.学校から帰りしなに),形容詞的なものとしては,「〜ぎみ」「〜がち」等の形式が挙げられる(ex.仕事に追われぎみだ)。このように複合語の前部分の用言性を活かして「句」を包摂することができるのは,右側に主要部がある,日本語の特長であると考えられる。 (2)では(1)を承け,用言句を包摂した「〜サニ」について,その成立から消滅に至るまでの史的考察を行った。この「〜サニ」構文は,中世室町期頃に,「[…ノ〜サ]ニ」という構造から「[…ガ〜]サニ」という構造への拡張によって成立した。しかし近代に至ると,「〜サニ」構文はコントロール構造を示すようになり,「〜サ」には感情形容詞の類しか許されないという制限が現れた。さらに現代では「欲しい」「-たい」の2語に限られ,「他動詞的」という制限が局限化した。そして現在においては,「金欲しさに」のように,助詞が標示されない形が普通となった。「…φ〜サ」は「金欲しさの犯行」がいえるように名詞であり,ここに至って,用言句を包摂した「〜サニ」構文は消滅した。このように,「〜サニ」形式は,一旦は句を包摂する形へと開くが再び閉じるという,興味深い変遷を遂げたと考えられる。
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Research Products
(2 results)