2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14710295
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
青木 博史 京都府立大学, 文学部, 助教授 (90315929)
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Keywords | 複合動詞 / 文法化 / 可能 / ミ語法 / 対象語 |
Research Abstract |
本年度における研究の業績は以下のとおりである。 (1)論文「複合動詞「〜キル」の展開」『国語国文』73巻9号(京都大学,2004年9月) (2)論文「ミ語法の構文的性格」『日本語文法』4巻2号(日本語文法学会,2004年9月) (1)は,複合動詞「〜キル」について,文献資料に基づいた上代から現代までの歴史と,方言への展開について考察したものである。「〜キル」は,「切る」対象を「物体→空間→時間」と抽象化させる形で発達し,「十分な状態ヘ至る」ことを表すものとなることで,語彙的レベルから統語的レベルへと発展した。「手足が冷えきる」といった「極度状態」,「小説を読みきる」といった「動作完遂」の用法は,いずれも文法化した「〜キル」の本質的な意味である「十分な状態へ至る」というところから派生した用法である。さらに,現在九州方言では「〜キル」は可能の意味を表すが,これも「十分な状態」という意味から派生したと考えられる。これまでは,「完遂」から「可能」が生じたと説かれてきたが,「〜するのに十分である(ない)」という,「話し手の心情」から可能の意味が派生したと考えられる。 (2)は,上代文献に見られる,「花をよみ」のような「ミ語法」と呼ばれる形式について,構文論的観点から記述したものである。「ミ語法」は「…ヲ〜ミ」の形で原因理由を表すが,「ヲ」が必ずしも「対格」と規定できないこと,「〜ミ」が形容詞と動詞の性格を併せ持つこと,等が問題視されてきた。ここでは,「…ヲ」を,感情形容詞「〜ミ」の「対象語」と規定することを提案した。そうすると,ミ語法は,「Aハ[BヲCミ]D」という構造として捉えられ,<主節の主語Aが,Bに対してCという評価・判断を下したためにDのようにする(なる)>という意味を表すものと考えられるのである。
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Research Products
(2 results)