2002 Fiscal Year Annual Research Report
西教寺並びに法勝寺関係聖教における訓点資料の基礎的研究
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14710298
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Research Institution | Otani Womens University |
Principal Investigator |
宇都宮 啓吾 大谷女子大学, 文学部, 助教授 (40257902)
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Keywords | 法勝寺流聖教 / 訓点資料 / 西教寺舜興蔵 / 大原来迎院如来蔵 / ヲコト点展開史 / デジタルデータ |
Research Abstract |
本年度については、西教寺舜興蔵の聖教の中から主要な訓点資料を抽出することと法勝寺流聖教として重要な『妙法蓮華経』院政期点の調査を行なった。 舜興蔵聖教の主要訓点資料は、その殆どが大原来迎院如来蔵伝来のものであることが確認された。現在、大原来迎院如来蔵に所蔵される訓点資料については、築島裕博士の『平安時代訓点本論考』で概要が知られ、また、文化庁による目録が存在するが、西教寺如来蔵の訓点資料は平安・鎌倉時代のものとしてそれらに匹敵するほどの価値を持つことが確認される。また、これらの資料によって大原における訓読活動のあり方を知ることができ、成果として大きなものが存する。これらについては、現在、本年度において大まかな抽出を行なったところであり、次年度以降に詳細な調査に基づく目録を作成する予定である。 詳細な調査に基づいた成果については、その一例として、西教寺蔵『無量義経疏』に寛平七年点を発見し、その位置づけを論考として公にした。この成果は、平安時代初期のヲコト点展開史上、重要な示唆を与えるものと考えられる。 上記の如く、西教寺舜興蔵聖教の訓点資料については今後更に分析・公開を行なうために現在も準備中である。 次に、西教寺に伝来する『妙法蓮華経』院政期点については、本年度、その撮影を終了した。本資料は、院政期の明覚の読誦を伝える資料として貴重であり(本年度韓国日本文化学会発表)また、美術史的にも貴重な装飾経であり、その公開が俟たれる資料である。本資料についても、公開を次年度以降に準備している。 最後に、本研究のもう一つの柱となるデジタルデータ化の問題についても論考に纏め、作業を進めている。その中には、デジタル撮影の可能性を求める意味から、今回、特殊光線による白点資料の分析も現在進めており、肉眼では判読不可能な資料の記録に関する検討も行なっている。この成果についても、次年度に公開する予定である。また、データ化については血脈類の調査と共に、そのデータ化を進めているところである。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 宇都宮 啓吾: "西教寺蔵『無量義経疏』の訓点について-憐昭加点のヲコト点を巡る問題-"訓点語と訓点資料. 108. 1-12 (2003)
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[Publications] 宇都宮 啓吾: "聖教調査におけるデジタルデータ化の試み-金剛寺一切経調査を手懸かりとして-"大谷女子大学紀要. 37. 135-148 (2003)
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[Publications] 宇都宮 啓吾: "東明寺蔵『大般若波羅蜜多経』の訓点について"国語文字史の研究. 7(予定). (2003)
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[Publications] 『磯馴帖』記念刊行会(メンバーの一員として:宇都宮啓吾): "磯馴帖"『磯馴帖』記念刊行会. (2003)