2002 Fiscal Year Annual Research Report
江戸の講釈師東随舎栗原幸十郎の読本に関する調査研究
Project/Area Number |
14710309
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
近藤 瑞木 東京都立大学, 人文学部, 助手 (20305402)
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Keywords | 近世文学 / 読本 / 講釈 |
Research Abstract |
本年度は東随舎の著作で、未見の諸本の書誌調査を各所蔵機関において実施した。特に『思出草紙』『憎まれ口』といった写本の調査について、本年度中に現存諸本すべての書誌整理を完了した(但し、『思出草紙』三井文庫旧蔵本については未見であり、尚調査中である)。また、神宮文庫蔵『誠感集』(『思出草紙』の異本)につき、集中的な調査を行い、書誌の整理を完了し、一部を複写及び筆写した。その結果、『誠感集』は『思出草紙』収録説話と内容的に重複しつつも、『思出草紙』に含まれぬ説話67条(うち、表題のみ残るものが24条)を有すること、さらに原形は三部構成で、神宮文庫に残る中、後編十八冊の前編に当たる部分のあったらしきこと、これらのう,ちの一部が『思出草紙』として貸本屋等で流通するに至ったらしきことなどが判明した。 同時に、『誠感集』弐編の分析を中心に、東随舎とその作についても解明を進めた。『耳嚢』にも記述のあった、大田南畝との関係を窺わせる記述(弐編巻十九「綱手船といふ唄の事」)や、『落葉集』巻二などにも見えるニュースソースの一人である服部当翁(弐編巻二「備後国水呑村猿の事」)など、東随舎の周辺人物に関して新知見が得られ、また、新たな講釈種典拠(講釈「塩原太助一代記」の類話と言える『落葉集』巻二「智を以て立身出世せし事」等)の発見や、「寺坂吉右衛門が事」「不仁の住職古墓を破却せし事」(いずれも『誠感集』)などに見える赤穂浪士一件への特異な関心の分析など、その「講釈師の読本」としての性格についても究明を進めた。
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