2003 Fiscal Year Annual Research Report
江戸の講釈師東随舎栗原幸十郎の読本に関する調査研究
Project/Area Number |
14710309
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
近藤 瑞木 東京都立大学, 人文学部, 助手 (20305402)
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Keywords | 講釈 / 読本 / 東随舎 / 耳嚢 / 話芸 / 舌耕文芸 |
Research Abstract |
『聞書雨夜友』九州大学附属図書館蔵本、青裳堂書店端本目録(平成十二年三月)掲載本等、『国書総目録』未掲載の東随舎資料の書誌整理を行った。東随舎の知友根岸鎮衛の『耳嚢』の未報告の伝本(史料編纂所蔵)を発見した。これらについてはおって詳細を報告する。 東随舎の写本作品について諸本の比較と内容の分析を行った。その構成から『落葉集』、『思出草紙』、『憎まれ口』にはそれぞれ二系統(抄出本は除く)が認められること、これらが貸本屋を介して流通しており、特に『憎まれ口』は中邑善二によって相当数複製されていたこと、『思出草紙』は享和元年の成立だが、天保年間にその流布の広まった形跡のあることなどがわかった。『誠感集』は本来三部作であるが、目録と内容に齟齬があり、内題等に補修の跡が認められ、本作の原型は三部(初篇十五巻、二篇十五巻、三篇二十巻)構成であり、オリジナルの初篇一、二巻および二篇全巻が散逸したため、残篇を二部構成に仕立て直していること、オリジナルの初篇と二篇の一部を『思出草紙』として抄出したことなどが判明した。『落葉集』については翻刻を進行中であり、これも完成次第公表する。 東随舎の著作を緒として、近世中期の小説作者の虚構意識を主題とする論文を執筆した。東随舎の著作に散見する「捏造された霊験談」に着目し、その発想が見世物や講釈などの大衆演芸のそれと交わること、そういった演芸レベルの「虚」の精神が、当時の小説作者の虚構意識に影響したことを論じた。かかる側面において、講釈師が近世小説史上に果たした意義を評価した本論文は、東随舎研究の一つの成果である。同論文は読本研究誌『読本研究新集』に投稿予定である。
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