2002 Fiscal Year Annual Research Report
白居易文学の特質「多情性」を支えた中唐の美意識「風流」の研究
Project/Area Number |
14710318
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
諸田 龍美 愛媛大学, 法文学部, 助教授 (20304701)
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Keywords | 中唐 / 白居易 / 風流 / 好色 / 多情 / 長恨歌 / 美意識 |
Research Abstract |
平成14年度の研究では、まず、白居易の「長恨歌」と同時期の作品である『鴬鴬伝』や『霍小玉伝』などの伝奇小説、および『全唐詩』『唐代墓誌彙編』等の資料に見られる「風流」の用例を収集・分析した(【研究の目的】の3)に対応)。これによって、中唐期には宴席や妓館といった、妓女たちとの交流を不可欠な要素とする、士大夫の「私的な交流の場」が広範に形成されており、そこはまた「風流の座」として認識されていたことを明らかにすることができた。また、当時「風流才子」と認められるためには、艶詩を中心とする詩歌の才能と、男女の情愛に対する共感的な態度か必須の要件であり、元〓や白居易は、当時から風流才子の代表的人物と目されていたことが判明した(【研究の目的】の1)および3)に対応)。 そこで、上記のような分析に基づき「好色の風流-『長恨歌』をささえた中唐の美意識」と題する論文を発表し、1、中唐期には「好色」をも是認する「風流の美意識」が一つの時代思潮として成熟しており、2、それが『長恨歌』の「創作」や「当時の社会における幅広い受容」をささえた、重要な基盤であったこと、3、『長恨歌』の主題は「風流の美意識」を超脱するものではあるが、それは楊貴妃に鍾愛した漢皇=玄宗に「共感すること」を通じてのみ実感される境地であって、あくまでも「風流の美意識の共有」が前提になければならなかったこと、などを、同時期の伝奇小説を中心とする広範な資料を論拠として証明した。
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Research Products
(1 results)