2002 Fiscal Year Annual Research Report
第2次大戦後の英国において英文学者がコミュニティ形成に果たした諸機能の分析
Project/Area Number |
14710334
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山田 雄三 大阪大学, 言語文化部, 助教授 (10273715)
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Keywords | メディア / 日本の英文学研究 / 英国カルチュラル・スタディーズ / 知識人 / 代弁=表象 / コミュニティ |
Research Abstract |
本研究の目的とは、日英の英文学者たちが第2次世界大戦の混乱の後に、それぞれどのような文化共同体を形成することを目指したかを歴史的に分析することにあった。平成14年度は、とりわけ1930年代初頭、つまり世界大戦開戦の時期から戦後の民主教育が制度化されるにいたった1950年代後半までを研究の対象とした。その研究の成果が、Osaka Literary Review誌第41号に掲載した論文「英文学とマスメディア-Scrutinyの時代からNew Left登場まで」と、『言語文化研究』誌第29号に掲載した論文「F.R.LeavisとE.P.Thompson」である。以下にその梗概を示したい。 前者の論文において、1950年代半ば頃を境として、文化共同体形成の問題への対応の仕方に英国と日本とでは大きな差異が生じたことを論じている。英国でScrutiny派による反メディア運動の流れを受けて、英文学者がcultural studiesを起こした頃、日本の英文学研究はアメリカに渡ったScrutiny派、つまり「新批評」と出遭っていた。禁欲的なまでに文化を語らない、アメリカ主導の文学批評理論時代の幕開けを迎えていた。そうした経緯を、本論文では概観している。 次の論文「F.R.LeavisとE.P.Thompson」では、より具体的に、メディアによる国民のマス化という事態に直面して、2人の英文学者F.R.LeavisとE.P.Thompsonがそれぞれどのような同人誌共同体の形成に従事したか分析している。ホイッグ党自由精神の伝統とマルクス主義の伝統と,守る伝統は異なってもそれを継承しうる同人誌コミュニティの形成を2人は目指し、その「伝統」がドグマにすぎなくなった時、ともに共同体は崩壊している。本論文では、そのプロセスを詳細に分析している。
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Research Products
(2 results)