2003 Fiscal Year Annual Research Report
真理が真理である根拠:Miltonと17世紀英国の政治・宗教論争の研究
Project/Area Number |
14710342
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Research Institution | Tsuru University |
Principal Investigator |
冨樫 剛 都留文科大学, 助教授 (30326095)
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Keywords | ミルトン / 初期近代 / イギリス / 清教徒革命 / イギリス内乱 / 誓約論争 / 共和主義 |
Research Abstract |
15年度の研究においては、MiltonのThe Tenure of Kings and Magistrates第1版(1649年)および第2版(1650年)の間における、為政者に対する抵抗権に関するカルヴィン主義的言説をめぐる矛盾--この抵抗権はすべての人にあるのか、あるいは下位の為政者のみにあるのか--について、1649年に樹立された共和政権が直面していた政治的状況、特に長老派の抵抗を防ぐために施行した「忠誠の誓約」(1649-1650年)をめぐる論争について調査することにより、説明した。概要は、以下の通りである。 Tenure第1版においてMiltonは、下位の為政者ではない一般の人間である軍部による議会粛清および国王Charlesの処刑を正当化するため、あらゆる人間に抵抗権があると主張しているが、粛清後の議会(残部議会)および軍部高官による共和政権樹立後、そして彼が国務会議の外国語秘書官に就任して以降に準備されたTenure第2版においては、軍部と同じく下位の為政者ではない一般の人間である長老派による政府に対する抵抗--政府が「忠誠の誓約」を人々から要求するに至って激しさを増した抵抗運動--を禁じるために、為政者に対する抵抗権を下位の為政者に限定している。Tenure第1版と第2版における矛盾は、純粋に思想的な問題ではなく、ある時には軍部による議会粛清・国王処刑を正当化するため、またある時には長老派の激しい抵抗にあっていた共和政権を正当化するために、Miltonが為政者に対する抵抗権をめぐるカルヴィン主義言説を操作した結果なのである。 この研究は、2003年10月18日に行われた日本ミルトン・センター第29回研究大会にて発表された。現在、英語の論文にまとめる作業をしているところである。
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