2003 Fiscal Year Annual Research Report
中国人日本語学習者の発音にみられる「不明瞭さ」の音声学的研究
Project/Area Number |
14710373
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
石原 淳也 広島大学, 留学生センター, 助教授 (50314779)
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Keywords | 日本語教育 / 中国語 / 音韻論 |
Research Abstract |
15年度は14年度に引き続き、中国語を母語とする日本語学習者の発話データの収集、中国語音声学・音韻論の文献収集および中国語音声学・音韻論の概要の把握、そして中国語の音声・音韻と日本語の音声・音韻の対照研究を進め、国内の学会において一回の研究発表を行った。これらの調査・研究の中で、「中国人日本語学習者の発話に見られる『不明瞭さ』」の一つの要因として次のような仮説をたてることができるとの結論に至った。 日本語にはいわゆる母音の無声化という現象が存在するが、その音声学的な実態は単に母音が無声化するというものではなく、いわゆる無声化母音があるように一般の話者が知覚するところに存在するものの多くは音声学的には子音としか言えないものであって、その子音が存在する音韻論的環境と、その子音が含まれる語ないし文を構成するそれぞれの分節音(おそらくはそのうちの母音)の産出にかかる時間とその子音の産出にかかる時間の比によって母音であるかのように認識されるにすぎないように思われる。そして、この無声化母音として認識される子音には中国語などに見られる気息音と音声学的に非常に近いものがあるのだが、中国語の場合、気息を伴う子音の持続時間は気息を伴わない子音の場合とほぼ同じであることが知られている。このような中国語の子音の持続時間に関する特性が学習者の日本語音韻習得の際に転移し、中国人日本語学習者の話す日本語が日本語母語話者にとって聞き取りにくいものとなっている可能性がある。 しかしながらこの仮説を実証するにはさらにいくつかの実験と調査を積み重ねる必要があるように思われる。
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