2002 Fiscal Year Annual Research Report
子供はどのような肯定的証拠や否定的証拠から文法を学ぶのか
Project/Area Number |
14710383
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
鈴木 孝明 京都産業大学, 語学教育研究センター, 講師 (50329926)
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Keywords | 言語獲得 / 文法 / 日本語 / 格 / 証拠 |
Research Abstract |
三歳一ヶ月から六歳一ヶ月までの幼児を対象とした二度の実験調査を行なった。最初の実験は、幼児に造語動詞を教えて、子供がその直後にどのような格助詞を造語動詞に対して使用するのかを調査する方法で行なわれた。格助詞に関する言語入力を全く行なわない条件での主語に関する正しい格助詞の使用率は68.6%であり、同じ条件での直接目的語に関する正しい格助詞の使用率は3.9%であった。これは、格助詞に関する言語入力がない状況では、幼稚園児は直接目的語に関しての正しい格助詞の使用が困難であること、また主格の格助詞使用に関しては、言語入力がなくてもその使用がある程度可能である事を示している。この後、肯定的証拠を与えてその影響を調べた。結果は、主語に関する正解率が70.6%で、直接目的語に関する正解率は3.9%というものであった。これによって言語入力を一度与えただけの肯定的証拠では格助詞の学習には影響・効果がないことがわかった。 次の実験では肯定的証拠に変わり否定的証拠を与え、これが子供の直接目的語の格助詞使用にどのように影響を与えるのかを調査した。最初の実験と同じ手順で、子供に造語動詞を教えた後に否定的証拠を与え、格助詞の発話を促した。その結果、一度だけの否定的証拠であれば、肯定的証拠の場合と同じくその効果は見られないことがわかった。子供は自分の発話を否定され更に訂正されても直接目的語に対格の格助詞を使用することができず主格の格助詞を誤用し続け、その改善はされなかった。しかしながら、否定的証拠を与え続けると変化がみられた。平均して3.25回程度の否定的証拠で子供の発話に改善が見られたケースが38%観察された。これは逸話的に取り上げられてきた「否定的証拠は何度与えても効果を持たない例」に対して疑問を投げかける結果となった。
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