2002 Fiscal Year Annual Research Report
汎カリブ海地域・大西洋圏における修辞法とその社会効果
Project/Area Number |
14710389
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
梶原 克教 愛知県立大学, 文学部, 助教授 (90315862)
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Keywords | 表象文化 / カリブ海地域 / クレオール / 行為遂行性 / 国際情報交換 / ジャマイカ |
Research Abstract |
まず以前より研究対象としてきた批評理論の研究を継続し、言語表象における事実確認的(反映論的)側面と遂行的側面の関係についての考察を深化させた。物や事実を反映するにとどまらず知覚や概念を創出する言語における行為遂行性および対語性を考察することで、表象とその社会効果との関連性がより明確となった。その成果は、別紙に記した論文および第19回IASIL International Conferenceでの"Language/Materiality/Reality"という口頭発表において結実した。一方、私がこれまで研究してきた文化圏と異なり、汎カリブ海地域における言語はそのクレオール性において際立った特長を持つものであるから、クレオール性を考察するのに必要な歴史的・言語的背景を関連図書を通じて研究し、以下のような知見を得た。すなわち、西インド諸島の文化表象においてはクレオール要素の利用についてしばしば対立的に論じられてきたが、それによって言語の反映論的指示対象よりもむしろ言語そのもの、つまり言語の遂行的創出力がおのずと強調されるという歴史的背景があるようである。2003年3月にはジャマイカに赴き、まず西インド大学モナ校図書館にて上述のクレオール性とカリブ海域社会のアイデンティティとの問題に関する過去の論争経過を記録した雑誌やテープといった資料の収集をおこなった。同時に言語的表象と身体的表象の関係を調べるために、ジャマイカ特有の大衆的文化形態である「ダンス」や「サウンドシステム」といった場でのフィールド・ワークをおこなった。これら二点に関しては、まだ資料を収集したばかりで明確な成果は出ていないが、少なくとも西洋文化と異なり詩や小説といった高級文化と音楽やダンスといった大衆文化とが興味深い形で節合されていることが推測されるので、来年度はさらにそうした側面から文化表象とカリブ海域の公共圏との関係について調査・研究を継続する。
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Research Products
(1 results)