2003 Fiscal Year Annual Research Report
地方交付税などの地方公共団体のための財政調整制度に関する憲法学的考察
Project/Area Number |
14720013
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
井上 亜紀 佐賀大学, 経済学部, 助教授 (20284466)
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Keywords | 地方交付税 / 財政調整制度 / 連邦制 / 生存権保障 |
Research Abstract |
本研究は、ドイツにおける政府間財政調整制度を参考にしながら、日本の地方交付税等のあり方について、憲法学的観点から考察を試みるものである。ドイツでは、財政格差を解消するために、州間あるいは州の中の自治体間で、いわゆる水平的な財政調整が行われており、これをめぐる州間、自治体間の衝突が、場合によっては規範統制訴訟という形で現れている。平成14年度の研究では、これらの訴訟において、従来、具体的な調整の合憲性について判断してきた憲法裁判所が、1999年11月の判決で、憲法の財政調整に関する規定における不確定概念を明確にすることが立法者に委任されているとの判断を下したことについて、この判決の意義を検討した。平成15年度は、1999年の判決にしたがって2001年に制定された「基準法」の内容および制定の経緯等について、論文および政府刊行物等を集めて研究を進めた。なお、平成14年度からの研究については、平成15年11月に九州大学で行われた公法判例研究会で、「財政調整に関するドイツ連邦憲法裁判所判決の意義」と題して報告をおこなった。 以上のように、これまでの研究は具体的事例に即して研究を行ってきたが、これらの研究を通して、議論の背景にある連邦国家観あるいは福祉国家観などの国家のあり方に関する研究が不可欠であることが明らかになった。したがって、平成16年度はこれらに視野を広げて研究を進める予定である。また、日本の地方交付税制度についての研究も進んでおらず、この研究も同時に進めていきたいと考えている。
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