2003 Fiscal Year Annual Research Report
環境法を中心とした行政による規制権限不行使と国家賠償責任に関する日仏比較研究
Project/Area Number |
14720017
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
北村 和生 立命館大学, 法学部, 教授 (00268129)
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Keywords | フランス法 / 環境法 / 国家賠償法 / 不作為責任 / 行政法 |
Research Abstract |
本年度も、昨年度に引き続き、フランス環境法における行政の不作為責任に関する行政裁判所を中心とした判例の分析が主な研究対象であった。 フランス環境法における不作為責任は、当初(そして現在でもそうであるが)化学工場などの指定施設に関する不作為責任の追及に関する判例から始まったと言えるであろう。その後の不作為責任に関する判例としては、アスベスト規制に関して国の責任を追及した判例などが見られる(たとえば、マルセイユ行政裁判所判決2000年5月30日。責任認容)。これらの判例では、国の不作為責任に関する要件として重過失(faute lourde)か、単純過失(faute simple)かといった点などが論点とされた。この点は、フランス行政法特殊の問題という側面もあり、必ずしもわが国の議論と直接つながりがないといえなくもないが、不作為責任の要件論と(特に裁量の余地がなくなり行政の権限行使が義務づけられるのはどこからか)類似する点もあり、比較研究の有用性があると思われる。 また、現在フランスにおいては、長年の課題とされてきた点ではあるが、環境法に関わる諸原則を憲法と同様の効果を持つ法規範とする作業が行われている。「環境章典(Charte de l'environnement)」と呼ばれているものであり、2003年に閣議決定され現在では議会での議論が行われている段階である。環境章典が成立すると、様々な環境法上の原則が従来とはその法効果や訴訟での意味が変わるのか、あるいは、環境法はとりわけEU法や国際法との関係が深いが、これらの法規範との優劣はどのようになるのかなどの新たな問題が生まれ、これらの帰趨が行政判例にも影響を与えることは充分考えられる。したがって、これらの憲法やEU法における変動も考慮に含めながら、フランス行政判例法の研究を継続していく必要があるものと考えられる。
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