2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14720022
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
森 肇志 東京都立大学, 法学部, 助教授 (90292747)
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Keywords | 自衛権 / 集団的自衛権 / 武力行使禁止原則 / 集団安全保障 / 国際連合憲章 |
Research Abstract |
本年度は、これまでの研究に引き続いて、戦間期における集団的自衛権の萌芽とその位置づけを明らかにした。具体的には、集団的自衛権(の萌芽)と集団安全保障体制との関係を論じる上で何が問題となったのか、そしてそれはどのように克服されてきたのか、に着目しながら、戦間期から国連憲章第51条の起草過程における「集団的自衛権」の形成過程を明らかにした。本研究は国際法学会2002年秋期大会において報告された。 第一に、戦間期における「集団的自衛権の先駆」には、国際連盟の集団安全保障体制の枠内で、いわば保全的措置としてそれを補完するものと、その枠外で、戦争に訴える自由の回復と位置づけられるものとがあった。さらに、国連憲章起草過程においても、この2つの位置づけの間での対立が見られたのであり、この対立は、集団的自衛権が国連の集団安全保障体制内の保全的措置と位置づけられることによって解決された。 第二に、集団的自衛権が、上記の意味で集団安全保障体制を補完するものでありながら、同時に、戦争を誘発しかつ拡大させる危険性、延いては集団安全保障体制を瓦解させる危険性を有するという点で、それと矛盾・対立する契機を内在するものであることも、明確に意識されていた。これは侵略の定義およびその認定の困難さを背景とするものであった。こうした正反対のモメントに関して、集団的自衛権の発動要件を個別的自衛権に比して厳格にし、また行動開始後においても連盟理事会あるいは安保理の判断に服するとすることによって止揚される、という枠組が一貫して見出される。ロカルノ条約において「違反」ではなく「明白な違反」を、国連憲章起草過程において「侵略」ではなく「武力攻撃」を発動要件としたのは、そうした、侵略等の発生に関する個別国家の認定を可能な限り客観化しようとする試みに他ならない。
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Research Products
(1 results)