2004 Fiscal Year Annual Research Report
協同組合から資本会社への組織変更に関する比較法的考察
Project/Area Number |
14720030
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
多木 誠一郎 小樽商科大学, 商学部, 助教授 (50324364)
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Keywords | 協同組合 / 会社 / 組織変更 / ドイツ法 / 営利 / 相互扶助 / 助成 / 法形式 |
Research Abstract |
一 法的レベルでの組織変更 (1)組合財産の流出 ドイツでは包括的な組織変更規定が整備され、変更前後で法人格の同一性が維持される。その際組合員総会の決議が要求される。これに対しわが国では法人格の同一性を維持したまま組織変更することは、一部の例外を除き法的には保障されていない。総会で解散決議をしたうえで、資本会社の新設手続きをとる必要がある。 ドイツと異なりわが国では解散に続き清算手続きを践むことになり、残余財産の分配がなされる。してみれば解散決議がなされても、組織変更に反対する組合員が多いほど、そして組合財産が流動性のないものが多いほど組織変更は実際上困難になることを、施設利用型組合を例にして明らかにした。 (2)情報提供 ドイツでは組織変更決議に際し、その是非を組合員が判断するのに資すべく広範な情報提供が総会で行われる。理事会による説明のみならず、監査団体が作成する組織変更監査報告書の読上げが要求されている。協同組合制度の番人と位置付けうる中央会が関与しているのが特徴である。 これに対しわが国で総会における解散に関与するのは、中央会ではなく行政庁である。この点については組合の自治という観点からみれば疑問を呈しうる。更に執行部以外の第三者が組合員に直接情報提供する機会も保障されていない点で、ドイツと比べて不十分であるという結論に達した。 二 実態レベルでの組織変更 協同組合が資本会社に法的には組織変更をしない場合でも、実態を見ると資本会社とりわけ株式会社と異なるところがないと批判されている。その原因として、平成に入って行われた協同組合諸法による商法(会社法)準拠という立法の態度が、しばしば挙げられている。しかし実態レベルでの株式会社化(組織変更)の原因は立法の態度よりも、むしろ協同組合の大規模化という事実そのものに求めうる点を明らかにした。
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Research Products
(1 results)