2003 Fiscal Year Annual Research Report
英米法におけるプロシード(proceeds・価値変形物)概念の検討
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14720041
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小山 泰史 立命館大学, 法学部, 教授 (00278756)
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Keywords | 価値変形物 / 物上代位 / 譲渡担保 / 動産売買先取特権 / 統一商事法典 / UCC / 流動動産譲渡担保 / 債権譲渡 |
Research Abstract |
本年度は、英米法におけるプロシード(proceeds)概念を検討するため、信託法上のrestitution(原状回復法)におけるtracingの検討に着手した。しかし、その一方で、日本法では、2003年度担保・執行法改正により、担保不動産収益執行制度が導入された(改正後の民法371条・民事執行法180条2項・188条・93条等)。改正後の民法371条は、賃料などの不動産の収益価値を直接被担保債権の弁済のために充てることを、従来の物上代位と並んで抵当権者に認めるものである。しかし、改正後の同条は、果実に対して被担保債務の不履行後に抵当権の効力を及ぼすのに対し、改正されていない372条の物上代位は「目的物の売却、賃貸、滅失又は毀損により債務者(抵当権の場合は所有者)の受くべき金銭」等を目的とする。厳密にいえば両者の範囲は一致していないため、価値代替的物上代位と、付加的物上代位を区別する議論が、今後再燃すると考えられる。その意味では、英米法のプロシード概念を検討する際に前提となるべき日本法の「価値変形物」概念自体が、動揺を来しているともいい得る。また、価値変形物への追及を根拠づける担保権自体の効力の差異も視野に入れて検討する必要性を認識した。 そこで、今年度は、英米法の検討と平行して、日本法の検討も行った。具体的には、動産先取特権に基づく物上代位権の行使と目的債権の譲渡が競合した裁判例(東京地判平成14年5月17日金融法務事情1674号116頁)について検討し、判例評釈を公表した。本判決は、最判平成10年1月30日民集52巻1号1頁に言及しながら、動産売買先取特権と抵当権の相違を理由として、債権譲渡の第三者対抗要件具備後はもはや物上代位権の差押えをなしえないとした。この判決は、価値代替物たる売却代金債権への追及の根拠となる担保権自体の相違が、追及の効力に強弱をもたらしうることを示唆しているものであり、注目に値する。 次年度中には、以上の検討から得た着想をも加味して、英米法のプロシード概念に関する検討を継続して論稿を公表するとともに、日本法の価値変形物概念についても再検討を継続し、さらなる成果の公表に結びつける予定である。
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Research Products
(1 results)