2004 Fiscal Year Annual Research Report
英米法におけるプロシード(proceeds・価値変形物)概念の検討
Project/Area Number |
14720041
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小山 泰史 立命館大学, 法学部, 教授 (00278756)
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Keywords | プロシーズ / proceeds / 物上代位 / 集合物 / 価値代替・代償物 / 譲渡担保 / 追及 |
Research Abstract |
研究計画の最終年度にあたる2004年度では、日本法における価値代替・代償物に関する検討と、比較法的な考察双方について一定の成果を上げることができた。まず、下記の第一の業績は、東京高判平成15年6月19日金融法務事情1695号105頁に関する判例評釈である。上記東京高判では、原告・被告間の取引が制作物供給契約としての性質を有し、売買契約ではないから、動産売買先取特権の成立自体が否定された。次に、下記の第2の業績は、価値代替・代償物について担保権の効力を及ぼす前提部分の、担保権の効力の強弱を他の債権者との関係でどの程度まで認めるべきかにつき、東京地判平成15年6月20日金融法務事情1699号67頁につき論じている。最後の、第三の論文が、本研究における最も中心的な業績である。この論文では、信託財産と他の財産との混和の局面における受益者(beneficiary)の権利主張や、不当処分・許されない利益の局面における第三者に対する責任追及において用いられる法理である「エクイティ上の追及権」(equitable tracing)と、統一商事法典第9編等の制定法の規定に基づくプロシーズに対する追及権(statutory tracing)との異同について詳細に検討している。前者が、信託法理の一適用場面であるのに対し、後者は、前者の法理を担保権の効力を価値代替・代償物であるプロシーズへ拡張するために借用して、制定法の規定に明文化したものである。「エクイティ上の追及権」が、もっぱら不当処分の矯正と受益者の救済の強化という側面で機能する法理であるのに対し、「制定法上の追及権」は、債務者がプロシーズの処分から債権者に対し弁済をするであろうという債権者の期待を保護するために、政策的に認められた制度上の枠組みである。しかしながら、例えば、銀行預金勘定中でプロシーズが混和した場合に、いかにして原財産との牽連性を証明するかについては、制定法上の追及権においてさえ、エクイティ上の追及権の下で形成された「中間最低残高のルール」等が、一定の修正を経て適用されることが明らかになった。また、この論文では、各制定法におけるプロシーズの定義規定の特徴についても合わせて検討している。
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Research Products
(3 results)