2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14720065
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
若松 邦弘 東京外国語大学, 外国語学部, 助教授 (90302835)
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Keywords | 政治学 / 政策過程 / ガバナンス / デモクラシー / イギリス / 西欧 |
Research Abstract |
本研究は、グローバリゼーションと欧州統合という二つの外的変化が、90年代以降、イギリスの政治システムにもたらした変容を、文献資料の分析と関係者へのインタビューをもとに検討するものである。具体的には、サッチャー後の二政権(メージャー、ブレア)について、複数政策分野における政策過程とそれを巡る政治過程を比較分析する。最終の本年度は、過去2年度の政策分野比較にもとづき、同時期のイギリス政治の変化をシステム変容として分析した。詳細は以下のとおりである。 80年代の制度改革の影響は90年代以降にとりわけ顕在化し、イギリスの政策過程が分権化を伴いながら開放的な性格を強める結果をもたらした。特定の団体による政策過程の独占は排除され、高度に組織化された集団の役割も低下している。90年代のイギリス政治では新しい利害の表出が著しく、政策過程に多彩な集団が関与するようになった。なかでも全国レベルのネットワークをもつ消費者団体や市民団体は、メディアを通じた世論への働きかけを重視している。このようなアジェンダの政治化は、開放性を増しつつある政策ネットワークにさらなる開放を促している。一方、ボランタリーセクターも公的機関の撤退による空白域を埋める重要な役割を担うようになった。 これら新しい集団と政府との関係は新しい制度を接点に拡大している。90年代なかばからの分権改革が地方制度を強化するなか、関係団体は地方レベルの組織化を進め、行政とそのようなローカルな集団との協議が増えている。地方における関係利害の包摂である。 とりわけ重要なのは、そのような利害が社会、環境面に及ぶ多様なものということである。イギリス政治にも経済的利害の配分や生産者利害にとどまらない新しいアジェンダが定着しつつある。環境保護、人権尊重、動物愛護などの脱物質主義的価値の尊重である。それは新たに政策過程の主体となった集団に支えられている。
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Research Products
(1 results)