2003 Fiscal Year Annual Research Report
国家安全保障におけるアマゾン:低強度紛争(LIC)とブラジルの新国防計画
Project/Area Number |
14720066
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
澤田 眞治 岐阜大学, 教育学部, 助教授 (10273210)
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Keywords | ブラジル / アマゾン / 安全保障 / 軍部 / 政軍関係 / 開発 / 民主化 / 低強度紛争 |
Research Abstract |
(1)ブラジル主導のアマゾン地域の国際協力はアマゾン河流域の9カ国1地域が締結した1978年のアマゾン協力条約に開始された。その背景には1970年代中頃からブラジル軍事政権が、核開発計画や人権問題によって対米関係が深刻に悪化したために、南米の地域協力を模索したことを指摘できる。東西デタント期の米州システムの変化はブラジルに自立的な外交を志向させたが、アマゾン河(さらにアルゼンチンとの関係を好転させたパラナ河)をめぐる南米域内の国際協調は南南協力の契機となり、後の地域統合にも多大な影響をもたらした。 (2)軍政末期に策定された軍部主導の計画は民主化後に変更が加えられた。コロル政権時代にリオデジャネイロで開催された国連環境開発会議(地球サミット)を契機にアマゾンへの国際的な関心が高まった結果、ブラジルはアマゾン監視システム(SIVAM)を提示した。これはレーダーや衛星など先端技術の活用によってアマゾンの情報の収集と分析を行うものであり、カルドーゾ政権期に部分的に運用が開始された。カリャノルチ計画についても軍部の民生業務が大幅に拡張されるなど変化が見られた。これらの変化は民主化後と冷戦後のブラジルの政軍関係の展開の中で検討される必要がある。 (3)冷戦後のブラジル国家安全保障の概念の変化もアマゾン防衛に多大な影響を及ぼした。カルドーゾ政権が策定した「国防政策(PDN)」はアマゾン防衛を最重要課題として提示している。メルコスルに見られるアルゼンチンとの和解によって軍政時代の南の脅威の仮説が消失した結果、アマゾン地域の北部国境が国家安全保障において重要視されるようになり、麻薬戦争への勝利や天然資源の防衛が緊要の課題とされている。ブラジル軍部は米国の軍事的プレゼンスがアマゾン地域に浸透することを懸念しており、アマゾン監視システムもブラジル主導の地域的なイニシアチブとして考えることができる。
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Research Products
(1 results)