2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14720070
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
木村 俊道 九州大学, 法学研究院, 助教授 (80305408)
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Keywords | 帝国 / 統合 / 初期近代 / ブリテン / 偉大 / マキャヴェリ / ベイコン / ハリントン |
Research Abstract |
平成14年度においては、初期近代ブリテンにおける人文主義者を中心とした「帝国」論の受容と展開を追跡した。とくに、MachiavelliのDiscorsi、Giovanni BoteroのRagione di Stato、Grandezza delle cittaに代表される大陸の人文主義者の議論においては、ローマ型の拡大国家とスパルタ・ヴェネチア型の現状維持国家という2つの歴史的モデルが存在していたこと。また、16世紀のイングランドでは前者の系としての「国家理性」論が受容されていたこと、後者の拡大国家論は、古代ローマを原型とする点などにおいて、プロテスタントや新プラトン主義者による他の「帝国」論のモデルとは異なること明らかとなった。 また、一方で1603年のイングランド・スコットランド統合問題を契機として、たとえばFrancis BaconのEssaysに見られるように、「偉大さ(greatness)」を希求した拡大国家論/帝国論が新たに展開されたこと。そして、拡大の議論は、17世紀中葉におけるJames HarringtonのOceanaにもそれが継受されたことが判明した。 この「帝国」と「統合」の問題は、1707年の政治統合を経てもなお、多元性君主国家「ブリテン」における政治的、思想的な中心課題であり続けた。このことは、たとえばスコットランドのAndrew Fletcherから提示された、イングランド中心の統合・拡大に対する異論に端的に表れている。さらに、このFletcherと、BaconやHarringtonを比較することによって、初期近代政治思想史研究におけるパラダィムである「リパブリカニズム」と、「帝国」論との関係を再検討することの必要性が新たに確認された。
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Research Products
(1 results)