2002 Fiscal Year Annual Research Report
幕末オランダ留学生におけるヨーロッパ政治学の導入をめぐって
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14720072
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
大久保 健晴 東京都立大学, 法学部, 助手 (00336504)
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Keywords | 日本政治思想史 / オランダ法学 / 幕末期オランダ留学生 / 西周 / 儒学 / 文化接触 |
Research Abstract |
本研究の目的は、幕末期に徳川政権よりオランダへ派遣され、ヨーロッパ政治制度を日本の国家政治に先駆的に導入した西周と津田真道の営為を検討し、近代日本の法・政治制度確立黎明期に彼らが果たした役割の政治思想史的意義を解明することにある。本年度は、西、津田が留学しS.フィッセリングより法学を学んだオランダ・ライデン、また彼らの出身地である島根県津和野と岡山県津山において、それぞれ重点的な史料調査を行い、近世蘭学の最終到達点であり近代日本における西洋社会科学導入の出発点とも言えるこの幕末オランダ留学を通じて、彼らが儒学を中心とした思想的伝統における法・政治観念をいかに再構成しようと試みたのか考察した。そこからは第一に、従来「グロティウス流の自然法学」と指摘されることの多いフィッセリング法学講義だが、実際に彼らが教授されたのは1848年のオランダ自由主義改革を主導したJ.Rトルベッケの法学論に基づく立憲主義であり、オランダ流の立憲君主政体論であったことが明らかになった。同時に、特に帰国後、徂徠学を媒介に儒学及び法家思想の法観念に対して内在的な批判を加えながら、フィッセリングから学んだ立憲主義の精神を自らの内に取り込もうと格闘する、西周の思想的営為が浮かび上がってきた。そして以上の研究を通じて、公議政体論が隆盛をきわめる徳川末期において、むしろ討論の作法が未成熟なまま西洋議会制度を安易に導入することを批判し、制限君主政体の確立を理念に、混迷化する公議輿論の在り方を制度論的に解決しようと試みた、西と津田の体制構想の特質が明らかになった。研究成果の一部は、平成14年12月にソウルで開催された国際学術会議、韓国・東洋政治思想史学会にて「西周の初期体制構想-近代日本における立憲思想の形成とオランダ法学-」として報告した。また平成15年7月発刊の「東京都立大学法学会雑誌」に研究論文が掲載される予定である。
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Research Products
(1 results)