失業と不平等:失業対策は不平等抑制政策となるか?

2003 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 14730010
• Research Institution: Osaka University
• Principal Investigator: 小原 美紀 大阪大学, 大学院・国際公共政策研究科, 助教授 (80304046)
• Keywords: 所得の不平等 / 消費の不平等 / 個票統計 / 失業者の資産形成 / 平成13年度雇用保険制度改正

Research Abstract

(昨年度までに得ていた結果:『全国消費実態調査』と『国民生活基礎調査』という日本で最も知名度が高い2つの社会統計を用いて所得の不平等を計測した結果、両者で不平等拡大傾向が大きく異なることが分かった。どちらを使うかで政策的インプリケーションが異なってしまうという事実は学術的にも政策的にも大変重要な発見であった。)
上記結果について、何が両者の差をもたらしているかを分析してきた。調査対象の分布や異常値の存在を調べてきたが差を説明する要因は発見できていない。現時点では、『統計によって不平等の拡大に関するインプリケーションは異なり(『全国消費実態調査』では不平等は拡大していない)、議論の際には何を基にしているか明示する必要があること』を挙げるに留めている(なお分析中である)。
また、失業と不平等の関係を分析するため国内外の研究成果をサーベイした。既存研究は、失業や失業期間が資産形成に与える影響、失業や失業期間が職探しのインセンティブに与える(これにより勤労所得に与える)影響、これらと失業保険政策との関係を分析するものに大きく分けられる。このうち3点目が政策的にも重要だと考え、日本の失業給付政策が与えた影響として分析し始めた。とくに、平成13年度の雇用保険改革(失業給付制度改正)について政策効果を検討する。現在、計量分析のために必要なデータを入力し分析の準備を進めている(平成15年度の改正についても行いたいが、今のところ分析に必要なデータが存在しない)。
このように、今年度は成果物として雑誌等に公表するには至らなかったが、分析結果は得ており、来年度には学会発表し論文として雑誌に公表したいと考えている。

Research Products

• [Publications] 小原美紀: "夫の失業リスクと妻の労働供給"雇用と失業に関する調査研究報告書(II)(出版:関西社会経済研究所). 第7章(4月に出版予定). (2004)
• [Publications] 小原美紀, チャールズ・ホリオカ, 村上あかね: "デフレ時代におけるリスク対処法"女性たちの平成不況(出版:日本経済新聞社). 第9章(4月に出版予定). 235-261 (2004)