Research Abstract |
今年度までに,経済成長モデルに経済地理モデルの側面を取り入れた理論的な枠組みのもと,時間を通じて,人口や産業がどのように集積していき,それに伴って,経済成長率はどのように変化していくのかについて分析を行った.そして,都市化が進展していく経済における,望ましい公共投資の規模や地域間配分のあり方について,いくつかの政策基準を提示した. これを受けて,今年度は,以下の2つの点について研究を行った. まず,現実の財政制度の枠組みで決まってくる公共投資の規模および地域間配分が,望ましい水準と一致するのかについて検討を行った.地方政府が,自分の地域内の居住者の便益のみを考えて,公共投資を行う場合,経済全体にとって,都市化が望ましい場合でも,都市化を実現するに十分な規模の公共投資が行われない可能性があることが明らかにされた.また,都市化が実現するだけの公共投資が行われたとしても,その水準は,最適なそれと比較して,都市部では過少,地方部では過大となり,最適な水準から乖離することが明らかとなった. また,昨年度に構築した理論的枠組みを発展させ,互いに異質な地理的背景を持つ多数の地域から成るモデルの構築を試みた.数値計算により,望ましい公共投資の規模や配分について検証を行った.これにより,わが国においては,公共投資は都市部では過少,地方部では過大である可能性が示されたが,さらに正確なデータを用いて分析を深めていくことは,課題として残っている.
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