2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14730013
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
石田 潤一郎 信州大学, 経済学部, 助教授 (40324222)
|
Keywords | 労働市場 / インセンティブ / 昇進 / 年功序列 / 終身雇用 / 人的資本 / 情報の非対称性 |
Research Abstract |
各経済主体がどのような選択を行いどのように行動するのかは、その主体を取り巻く社会の規定する制度や慣習が与えるインセンティブによって決定されると考えられる。しかし、同時に、そうした制度や慣習といったものは、一方的かつ外生的に与えられるものではなく、その社会を構成する各主体が自らその制度や慣習に従うインセンティブがあって初めて維持可能となることもまた事実であろう。こうした観点から、制度・慣習と各主体の行動パターンには双方向の因果関係があると考えられ、この関係によりさまざまな異なる制度や慣習というものが発生し維持されていく可能性が指摘されている。 こうした点をふまえ、昨年度は特に終身雇用や年功序列といった日本企業特有の雇用慣行や制度に焦点をあて分析を行った。"Signaling and Strategically Delayed Promotion"(Labour Economicに掲載予定)では、教育制度のあり方と年功序列的昇進制度の関係を論じ、日米における昇進制度の相違を教育に代表される人的資本蓄積のプロセスの相違に帰着できる可能性を指摘した。"Lifetime Employment as a Coordination Failure"(Japan and the World Economyに掲載予定)では、内部労働市場(企業内の人材管理)と外部労働市場(転職市場)との関係を考慮し、どのような条件の下で企業が終身雇用制度を採用するのか分析を行った。この分析で、企業が終身雇用を採用している状況では外部労働市場が十分に機能しない一方で、外部労働市場が十分機能しない状況においては終身雇用の価値が高まるという一種の戦略的補完性が生じ複数均衡が発生する可能性を指摘した。また、こうした状況から生じる終身雇用制度は一種の強調の失敗の構造を有しており、社会的に望ましくない均衡にある可能性も指摘した。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] Junichiro Ishida: "The Role of Social Norms in a Model of Marriage and Divorce"Journal of Economic Behavior and Organization. 51(1). 131-142 (2003)
-
[Publications] Junichiro Ishida: "The Role of Intrahousehold Bargaining in Gender Discrimination"Rationality and Society. 15(3). 361-380 (2003)
-
[Publications] Junichiro Ishida, Masanori Yokoo: "Threshold Nonlinearities and Asymmetric Endogenous Business Cycles"Journal of Economic Behavior and Organization. 54(2). 175-189 (2004)
-
[Publications] Junichiro Ishida, Noriaki Matsushima: "A Noncooperative Analysis of a Circular City Model"Regional Science and Urban Economics. 近刊.
-
[Publications] Junichiro Ishida: "Signaling and Strategically Delayed Promotion"Labour Economics. 近刊.
-
[Publications] Junichiro Ishida: "Lifetime Employment as a Coordination Failure"Japan and the World Economy. 近刊.