Research Abstract |
1990年代に入ってから,わが国では消費者物価指数の精度に関する議論が起こったが,問題点の一つとして取り上げられたのは,消費者物価指数の価格データの基礎データ調査方法であり,菅幹雄のこれまでの研究成果から,基礎統計である価格調査の調査方法の変更が,加工統計である価格指数に与える影響を無視できないことが確認された.そこで,この研究を発展させるために,(1)「商業統計調査」に基づいて,店舗形態別店舗数分布に関するデータベース,(2)「国勢調査」に基づいて,世帯属性別のデータベース,(3)「全国物価統計調査」に基づいて,品目別,店舗形態別価格に関するデータベース,(4)「全国消費実態調査」に基づいて,品目別,店舗形態別,世帯属性別消費支出に関するデータベース,これら(1)〜(4)のデータベースを接続した統合的なデータベースを構築した.このデータベースに基づいて,以下の二種類の実験的価格指数の試算を行った.一つは,PollakとPraisが提案した「寡頭的生計費指数」に基づく「寡頭的価格指数」,もう一つはPraisとMuelbauerが提案しDiewertが一般化させた「民主的生計費指数」に基づく「民主的価格指数」である.また,品目別価格指数について,店舗数,売上高,店舗面積,従業員数をそれぞれウェイトに集計した場合の加重算術平均単価の試算を行った.これらの分析結果の読み取りはまだ十分ではないが,この分析結果が示唆しているのは,物価指数の作成において,代替的な計算手法が何通りも考えられること,それらの代替的な計算手法によって物価指数の値に差異があることである.したがって,これら代替的な計算手法のうち,どれが社会的にみて物価指数として望ましいのか,それに対応する調査方法とは何かが今後の検討で明らかになる.
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