2002 Fiscal Year Annual Research Report
貧困削減戦略と社会関係資本―途上国の社会的要因に配慮した開発援助の効率化―
Project/Area Number |
14730038
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
野田 真里 名古屋大学, 大学院・国際開発研究科, 助手 (90334995)
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Keywords | 社会関係資本 / 貧困削減 / 持続可能な生計アプローチ(SLA) / 英国国際開発庁(DFID) / トップダウン / ボトムアップ / 住民参加 |
Research Abstract |
本研究プロジェクトの初年度にあたる本年は、近年の貧国削減戦略と社会関係資本に関する理論的研究を主としつつ、次年度以降の事例研究に向けてカンボジアのケースについても検討した。理論研究においてはこの分野において先駆的な試みとなっている英国国際開発庁(DFID)の「持続可能な生計(SL)アプローチ」を中心に行った。調査方法は、国内における文献研究および、英国における文献研究(ロンドン大学等)および聞き取り調査(ロンドン大学A.ホール博士、D.ルイス博士、サセックス大学 R.チェンバース教授等)である。 DFIDは1997年の『国際開発白書』において、イギリスの開発援助政策の柱を貧困の根絶に置くことを表明、貧困削減は世帯収入の向上のみで達成されるものではなく、日常生活の「生計」改善を通して行われるものであるとする、SLアプローチがその重要な戦略として採用されることとなった。「生計」とは、「生活の手段を得るための潜在能力、資源(物質的、社会的資源も含む)、および活動から成り立っている」とされている。この戦略の戦略の中心となるのは、貧困層の多様な生計戦略を可能にする、五つの資源・資本、即ち物的資本、金銭的資本、天然資源、人的資本、社会関係資本の組み合わせである。ここで、開発において重視されてきた従来の四つの資本に加え、新たに社会関係資本が着目されてきたのは、1)生計を持続可能なものとするためには「総合農村開発」(IRD)のようなトップダウンではなく、住民参加によるボトムアップが重要である、2)そのために、開発資源を外から持ち込むだけではなく、在来の資源、とりわけ人々の信頼、規範、ネットワーク等を積極的な活用することが重要である、といった認識による。 次年度は、DFIDに加え、世界銀行やJICAの貧困削減に関する理論研究を深めつつ、フィールドでの事例研究にも取り組んでいきたいと考えている。
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Research Products
(1 results)