2002 Fiscal Year Annual Research Report
GDPギャップの推計とマクロ政策判断に関する比較実証研究
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14730041
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
宮尾 龍蔵 神戸大学, 経済経営研究所, 助教授 (40229802)
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Keywords | GDPギャップ / 時系列アプローチ / マクロ生産関数 |
Research Abstract |
本研究課題は、GDPギャップの推計に関する包括的な比較実証分析を行うことを目的とする。初年度は、まずGDPギャップの推計アプローチに関するサーベイを行い、それぞれの特徴・問題点を整理した。具体的には、時系列アプローチに基づくものとして、線形トレンド、2次トレンド、屈折付き線形トレンド、Hodrick-Prescottフィルター、そしてマクロ生産関数アプローチに基づくものとして、旧経済企画庁・内閣府による推計値、また日本銀行スタッフによる推計値などを比較検討した。それぞれの特徴を整理した結果、時系列アプローチでは、その作成上の問題として、逐時的にデータを追加して再推計を行う場合に、過去のGDPギャップ推計値が影響を受けるという問題があり、それをわが国の実際のデータを使って確認した。事後的に、過去の評価が変更するというのは好ましくなく、データの追加により全体のトレンドが大きく変化する場合には、その変更幅が顕著であることが分かった。一方、マクロ生産関数に基づく推計値の場合は、推計のプロセスで平均的な稼働率の計算などトレンド平均を用いるため、基本的には同じ問題が含まれてしまうが、最終的な推計値への影響はごく僅かであることが確認された。他方で、マクロ生産関数アプローチの問題点としては、推計誤差や不完全競争・収穫逓増といった問題が残されている。その1つの対処方法として、生産性とは無相関の操作変数を利用し、それがソロー残差と相関が無いかどうかを検証するという方法が提唱されている。操作変数としてアメリカの軍事支出を使った予備的な検証を行ったところ、有意な相関は検出されず、上記の問題は小さいということが示唆された。
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