2002 Fiscal Year Annual Research Report
企業の全要素生産性に影響を与える要因のインドにおける実証研究
Project/Area Number |
14730050
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
加藤 篤史 青山学院大学, 経営学部, 助教授 (00286923)
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Keywords | 全要素生産性 / 動機づけ / 競争 / コーポレート・ガバナンス / 公企業 / 外資系企業 |
Research Abstract |
2002年度の研究においては,第1に理論的フレームワークの構築,第2にインド企業のデータを用いた実証研究を行った。理論的フレームワークの構築においては、企業がどのように生産性を向上させるかという問題を,広く経営学の文献をサーベイすることによって検討し,経営者の努力が重要であることを確認した。その上で,経営者の動機づけの問題を,経済学におけるインセンティブの理論を検討することによって考察した。これらの考察の結果を土台として,企業の生産性が経営者の努力を通じて生産性向上に結びつく条件の明確化を行っている。この作業は現在も進行中であるが,現在入手できるデータの範囲内で,企業の全要素生産性を被説明変数とする基本的な回帰分析を行った。 本年度検討した説明変数は,競争の程度,負債資産比率,公企業ダミー変数,外資系企業ダミー変数である。競争は様々なチャネルを通じて経営努力を高めると考えられるため説明変数に含めた。また,高い負債資産比率は経営者の努力を引き出し,企業の生産性を高めると考えられる。インドにおいては公企業の経営者は努力のインセンティブを充分に与えられていないため,民間企業よりも生産性が低いといわれており,この可能性を検証した。最後に外資系企業は,他国での経験から技術的に優位性を持っている可能性がある一方,現地の環境については熟知していない。このため外資系企業の生産性が高いか低いかを検証した。1989年から2000年のインド企業のデータを用いて得られた推計結果は,第1に公企業の生産性は有意に低いということ,第2に競争が生産性を有意に押し上げているということである。しかし,金融市場からの経営者の規律づけは十分に働いていないようであり,これは主要銀行をすべて国有化していることが原因ではないかと考えられる。また,外資系企業の生産性がインド民間企業と比べ有意に高いという結果は得られなかった。
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