Research Abstract |
本年度の研究実績 1.資料の調査・収集・整理 主な調査先は,国立国会図書館,国立公文書館,交通博物館(以上東京都千代田区),学習院大学法経図書センター(同豊島区),一橋大学(国立市),横浜開港資料館(横浜市),埼玉県立文書館(さいたま市),鹿児島県立図書館(鹿児島市),アメリカ合衆国国立公文書館(メリーランド州),ハグレー博物館(デラウェア州)などである。収集した主な資料は,『公文類聚』,『公文雑纂』,『セメント連合会年鑑』,『ダイヤモンド』,『大日本窯業協会雑誌』,『鉄道省文書』,『官報』,『占領軍接収文書(RG131)』,その他各種の社史,営業報告書類である。 2.資料分析と研究論文の作成 本年度は,原料・製品ともに重量商品であるセメント業経営における物流問題の解明を,明治期を中心に試みた。事例となる浅野セメントは,起こりうる物流問題への対応を念頭に置きつつ創業するが,その後における日本産業革命の展開,とりわけ急速な社会資本の整備は,セメントの消費量,用途,製造技術,流通条件を当初とは大きく異なるものに変えていった。本研究では,浅野セメントがこうした急激な状況変化に対してきわめて柔軟に対応し,日本を代表するトップ・メーカーとしての地位を確立していく過程をかなりの程度明らかにすることができた(詳細は渡邉恵一「浅野セメントにおける市場と原料調達」2002年を参照)。 また,年度末には,既発表論文と本年度に執筆した書き下ろし部分からなる学位論文『近代日本の産業発展と輸送 -浅野セメントにおける原料調達問題-』をまとめ,立教大学より博士(経済学)を授与された。なお残されている課題についてさらに検討・解明を進め,研究の完成度を高めて,成果を広く公表する段階にこぎ着けることが,次年度の課題となる。
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