2002 Fiscal Year Annual Research Report
政府の財政運営における民間活力導入に関わる理論的・財務的・実証的経済分析
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14730071
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Research Institution | Kobe University of Commerce |
Principal Investigator |
赤井 伸郎 神戸商科大学, 経済研究所, 助教授 (50275301)
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Keywords | PFI / 民活導入 / インセンティブ |
Research Abstract |
2002年度は、以下の3つの研究成果を得た。 (1)民間活力の導入に関わる事例のデータ収集 民間活力の導入の試みは、近年活発に行われており、PFIの事例紹介やその手法の問題点を整理した研究も蓄積されてきている。さらに、PPP(Public Private Partnership)のあり方に関する研究も行われはじめている。2002年度の本研究では、それらを整理し何が問題であるのかを議論した。その結果、技術的側面だけではなく、インセンティブに関わる経済学的側面も重要であることが示されている。 (2)過去の民間活力導入事例の実態 民間活力の導入は、第三セクターという形で1960年代ごろから行われてきているものの、その実態は十分に把握されていない。2002年度の本研究では、総務省が行った第三セクターに関する調査および地方公社の調査結果を用いて、現在、第三セクターの実態がどのようなものであるのかを、各セクターの財務データなども考慮して、整理した。その結果、設立・事業の継続において、適正でない運営が行われてきた可能性が指摘されている。 (3)過去の民間活力導入事例からみる、民間活力導入手法の評価 第三セクターの個票の財務データ(経常収支(赤字・黒字)、債務超過など)をもとに、どのような要因が財務を悪化させる要因となっているのかを、実証分析手法を用いて検証した。その結果、景気悪化というマクロ要因以外にも、民間活力を導入するという第三セクターの特徴にも、インセンティブに関わる問題があること、また、設立・事業の継続においても、公共サービスの効率的供給という本来の目的以外の要因(政治的要因)が関わっていることが明らかとなっている。もちろん、そのような要因は、経営を悪化させ、本来の目的の達成を困難にさせるものとなる。 以上、2002年度の本研究から、民間活力導入は必ずしも望ましいのではなく、注意すべき点(特に、インセンティブの問題)が潜在しており、その点を克服することが成功の鍵である可能性が得られた。なお、本年度は3ヵ年の研究の第一年度であり、引き続きこの点を調査する予定である。
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