2002 Fiscal Year Annual Research Report
マクロ経済動向のインディケータとしての金融指標の役割に関する理論・実証分析
Project/Area Number |
14730077
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
植田 宏文 同志社大学, 商学部, 助教授 (00268111)
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Keywords | 金融情報変数 / クレディット・ビュー / 資産選択行動 / 信用創造 / 金融政策の有効性 / 危険回避度 / 企業の投資行動 / 資金調達行動 |
Research Abstract |
本年度の研究では、マクロ経済動向のインディケータとして金融指標の役割と重要性について研究し、とりわけマクロ経済活動に先行する金融指標(マネーサプライ、広義信用量、リスクプレミアム)に着目し、どのような金融指標が前者と安定的な関係にあるのかについてマクロ経済モデルを構築し理論分析を行い、さらに実証分析を通じて検証し以下の結論を得た。 1、金融自由化が進展し証券化がすすむほど、マネーサプライの将来経済の動向に対するインディケータとしての役割は低減していき、一方広義信用量が金融先行指標としての役割を増していくこととになる。これは、マネービューに対してクレディットビューを支持するものである。証券化が進めば、金融機関の融資なくして、企業と家計の間の資金移動で、企業の資金調達が可能になる。従ってマネーサプライが一定であっても、企業の投資が増加させることができる機会が生じるためである。 2、マネーサプライおよび総信用量の経済成長に関する相関性を、どのような金融政策のフレーム枠の下で変化するのかをマクロ経済モデルを構築し分析すれば、中央銀行がハイパワードマネー一定政策・金利一定政策のどちらを採用しても、総信用量の方が相関関係が高いことが判明した。 3、総信用量のマクロ経済活動との相関性は、家計がどのような資産選択行動をしているかに依存することが確認された。家計の資産選択行動において、相対的危険回避度が富の減少関数であるならば、総信用量の大きな変化を通じてマクロ経済活動も大きく変動することが明らかとなった。また危険回避度が可変的あることも実証分析を通じて確認された。このことは将来の金融政策運営のあり方についての重要な示唆を与えるものである。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 植田宏文: "機関投資家としての公的金融の役割と課題"同志社商学(同志社大学). 54巻・1/2/3号. 17 (2002)
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[Publications] 植田宏文: "ポートフォリオ行動、金融政策および総需要"同志社商学(同志社大学). 54巻4号. 29 (2003)
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[Publications] 植田宏文: "金融情報変数と政策ターゲット"神戸学院経済学論集(神戸学院大学). 34巻4号(発表予定). 21 (2003)