2002 Fiscal Year Annual Research Report
動学的CGEモデルの開発とそれに基づく公共政策のシミュレーション分析
Project/Area Number |
14730078
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Research Institution | Konan Women's University |
Principal Investigator |
吉田 有里 甲南女子大学, 人間科学部人間環境学科, 講師 (50340914)
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Keywords | 医療保険改革 / 少子・高齢化 / 価格弾性値 |
Research Abstract |
近年、人口構成の高齢化や医療技術の進歩等に伴い、国民医療費が増大し、財政を,悪化させている。医療サービスコストは、公費・保険料・患者負担により賄われている。どれも国民の負担である点で違いはないが、患者が診療を受けるか否かを決定する際に直面するのは患者負担であるから、受診行動は患者負担に大きく依存することになる。それを踏まえて、平成15年4月にはサラリーマンの患者負担率が2割から3割へと引き上げられ、高齢者についても、平成14年10月より70歳以上の者の患者負担率が定率1割とされた。 受診行動が患者負担にどれだけ依存するのかについては、既に日本でも多くの実証研究はあるが、それらはレベルでの推計にとどまっている。仮に患者負担を引き上げたとしても、受診率や一人当り医療費のレベルが低下するとは考えにくい。むしろ、患者負担の増加は医療需要の増加を抑制するとした方が現実的である。また、過去に患者負担を引き下げたことがない以上、レベルの議論ではおよそ負の関係など見いだせない。そこで、本研究では患者負担割合の変化率と給付費の変化率との間の関係の推計を試みた。 その結果、患者負担割合の変化率の係数は一般(0-69歳)で約-0.66、老人(70歳以上)で約-0.56であり、ともに負で有意であった。一人当り給付費の変化率と患者負担割合の変化率との間には負の関係が成立し、しかも老人の方が一般よりも反応は小さい。また、患者負担割合の引き上げ率が小さい時期では、医療給付費の増加率のレベルは下がることも分かった。 なお、本研究は、日本版CGEモデルにおける政府部門に用いるパラメーターを得るために行った。
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Research Products
(1 results)