2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14730084
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
安井 敏晃 香川大学, 経済学部, 助教授 (30257183)
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Keywords | 人的損失 / キーパーソン / 生命・健康保険 |
Research Abstract |
本研究は,「人的損失」と捉えられてきた人間の死亡,傷害等に関わる損失概念について再検討を行うために,特に,キーパーソンの喪失について分析していくことを目的としている。 そのため,本年度は,まず,キーパーソン生命保険およびキーパーソン健康保険(以下キーパーソン生命・健康保険と略)につき,同保険が発達している米国の事例を中心に検討した。 その結果,現在の米国においてもこれらの保険は決して十分に普及していないことがわかった。また,キーパーソンに対する付保額の算定方法が依然として発展途上であることもわかった。米国においては,人保険においても被保険利益が求められているが,そのことがキーパーソンに対する適切な付保額の算定を容易たらしめるわけではない。適切な付保額の算定には,キーパーソンの喪失による損失額の算定が必要となるが,それは極めて困難である。企業収益が低下することは明らかだとしても,はたしてキーパーソンの寄与分がいくらになるか判断することは難しい。またキーパーソンの喪失に対して,他の者で代替する場合には,代替により生じる業務効率の低下などを測定することも必要となるが,これもまた困難である。これらの理由から,キーパーソンの付保額の算定には未だ客観的な方法が存在するわけではない。 さらに,キーパーソン健康保険が,企業のリスク処理策としては極めて不十分であることがわかった。これは次の理由による。キーパーソン喪失による損害額の算定は客観的にできないことから,主観が作用する余地がある。そしてそのことは,保険金受取人によるモラル・ハザードの作用を促す誘因ともなりうる。そこで保険者としては,対抗策を講ぜざるをえないが,それにより,保険本来が果たすべきリスク転嫁の機能が十分に果たされていないのである。 今後は,上述の成果を踏まえ,引き続きキーパーソンの喪失に関して研究を進めていく。その際,米国以外の事例および公保険にも留意して分析していく。
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Research Products
(1 results)