2002 Fiscal Year Annual Research Report
日系多国籍企業の情報処理システムと人的資源管理―アジア地域統括拠点における人材育成支援を中心に
Project/Area Number |
14730107
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
細萱 伸子 上智大学, 経済学部, 助教授 (50267382)
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Keywords | HRD / HRM / 日系多国籍企業 / 地域統括会社 |
Research Abstract |
多国籍企業の人材開発における情報交流パターンとその規定要因については、HRDについて単独で扱う文献の数が少なく、HRMをふくめて再検討した。HRM、HRDに関する管理システムの異同と子会社が利用する本社情報リソースの影響力の関連についての研究は主に2種類の理論的枠組みから構成される。第一は、社会学の制度学派による組織同形化の理論であり、多国籍企業の親会社-子会社が形成する組織フィールド内部での同形化圧力と、子会社が現地社会で形成するフィールド内での同形化圧力とのバランスで同形化の程度が左右されるとしている。第二は戦略的HRMの研究であり、子会社事業戦略と親会社のHRMシステムが不適合な場合、親会社からのシステム移管圧力が弱まると結論している。これらの理論には共通点も多く統合の可能性もあるが、親会社-子会社間の戦略的連係の程度や子会社の組織フィールドの内容によって理論的統合の可能性が左右されるため、多国籍企業の全体での戦略パターンや各子会社の戦略ポジションと関連付けた精査が必要である。また組織の公式構造、非公式構造という点から組織の情報処理アプローチに依拠すると、非公式構造がより迅速かつ経済的ではあるが具体的な組織行動という点では人材、資金の調達などで公式構造に劣るため、組織は内部の非公式調整メカニズムを制度的に支援することでこの問題を補う必要があることが指摘される。日系多国籍企業はその多くが世界的製品事業部制を取っているため、特定の地域内に設立される地域統括本部(RHQs)の役割は「緩やかな統括」であるとされる。この場合、RHQsには子会社の戦略決定や人事管理に介入する権限はなく、地域単位での情報収集やコーディネーションを担当する。そのため、従来の理論研究が扱ってきた公式構造に関する知見が全てのRHQsに当てはまるのかどうか、RHQsの個別特性との関連で精査する必要が明らかになった。
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Research Products
(1 results)