2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14740022
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
竹田 雄一郎 九州大学, 大学院・数理学研究院, 助教授 (30264584)
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Keywords | アラケロフ幾何学 / 代数的K理論 / 高次チャウ群 / 多重対数関数 / サギエ予想 |
Research Abstract |
本研究のテーマは、高次チャウ群のアラケロフ幾何学における類似物を構成して、それを数論的幾何学に応用することである。特に、レギュレーター写像への応用を念頭に置いている。しかし本年度は、チャウ群ではなくて、筆者が以前の研究の中で定義していた高次算術的K理論を用いて、ザギエの予想について研究した。 代数体のレギュレーター写像とは、代数体の高次K群から実数体のいくつかの直和への写像で、代数体のL関数の特殊値との密接な関わりが証明されている。ザギエ予想とは、代数体のレギュレーター写像の像が、多重対数関数を使って表示できるという予想である。 筆者は、キューブとボット・チャーン形式を用いて、ザギエ予想を研究した。キューブとは、多様体のベクトル束からつくられる幾何学的対象であり、それを用いて高次代数的K理論の元を記述することができる。ボット・チャーン形式は、キューブに付随するある微分形式で、代数的K理論の元をキューブで表したとき、そのボット・チャーン形式はレギュレーター写像の像を与えることが、わかっている。 多重対数関数は、0と1で極をもつ複素平面上の多価解析関数であるが、筆者はまず、多重対数関数から作られる新しい一価関数を導入し、それが満たす微分方程式を書き下した。そして、その方程式と両立するキューブの方程式を導入した。それを解くことによって、多重対数関数に関係するキューブが得られ、それを用いて代数体の高次K群の元を大量に、組織的に構成することができる。それらのレギュレーター写像の像が多重対数関数の値と一致することも、直ちにわかる。 このようなザギエ予想のアプローチは、これまでの研究の中に類似するものが全くない、という意味で、独自性の高い研究であると自負している。
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