2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14740120
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
石井 豊 九州大学, 大学院・数理学研究院, 助手 (20304727)
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Keywords | 複素力学 / エノン写像 / ジュリア集合 / 双曲性 / 量子トンネル効果 / カオス |
Research Abstract |
本年度は主に以下の二つの主題について研究を行なった。 (1)高次元複素力学系の立場から、Henon写像族の解析をJ.Smillie氏(Cornell University)とともに行った。特に、複素Henon写像が双曲的になるための位相的、あるいはチェック可能な十分条件を提示した。この定理の応用として、一次元の双曲的な二次多項式が複素Henon写像として摂動されたときに双曲性を保つ範囲を、パラメータに関する具体的な条件式として与え、双曲的ホースシューのパラメータ領域の新しいバウンドも求めた。さらに、このようにして得られる複素Henon写像のJulia集合は、ある一次元系の射影極限によってモデル化されることも証明した。 (2)物理学者の首藤啓氏(東京都立大学)と池田研介氏(立命館大学)らとともに、一次元半古典系におけるトンネル効果とそれに対応した複素Henon写像の力学系との関係を研究した。一般に量子力学の複素半古典論において、ある粒子の遷移確率は複素相空間(すなわち複素二次元空間)内の経路積分としてあらわされ、その積分に寄与しているものの実平面に含まれない経路全体がトンネル効果を記述すると考えられている。今回、このような寄与経路全体と、Hamilton方程式のPoincare断面として得られる複素Henon写像の前方Julia集合との対応関係を、数学的に一部正当化した。
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Research Products
(1 results)