2002 Fiscal Year Annual Research Report
大型液体シンチレーター実験装置における放射線バックグラウンド事象の研究
Project/Area Number |
14740148
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
古賀 真之 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (90343029)
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Keywords | カムランド / 原子炉ニュートリノ / ニュートリノ振動 |
Research Abstract |
本年度は先に予定していたラドン系列の放射線を検出するためのシステムを作り上げるのに十分な予算がなかったため、来年度必要となる周辺機器の購入を行い、大型液体シンチレーター検出器であるカムランド実験装置本体でのバックグラウンド事象の研究を行った。 現在カムランドは原子炉ニュートリノの検出のためにおよそ1MeVの閾値での運転を行っている。カムランドにおいて原子炉ニュートリノの検出を対象とした場合、最も問題となるバックグラウンド事象はシンチレーター中に存在する可能性のある^<238>Uおよび^<232>Thの娘核の連続した崩壊事象である。具体的には^<238>Uの場合^<214>Bi-^<214>Poの崩壊に伴うベータ線とアルファ線、^<232>Thの場合には^<212>Bi-^<212>Poの崩壊に伴うベータ線とアルファ線が、原子炉から来る電子型反ニュートリノの検出に用いている遅延同時計数に混入する可能性があるからである。^<238>Uおよび^<232>Thの存在量はあらかじめ中性子放射化法により調べられており、ともに10^<-16>g/g以下であることは解っている。 カムランドのデータからこれらの事象を選別するためには、双方の連続した崩壊様式に則して独立に崩壊点(相関、時間相関、エネルギーにたいするカットを施した。この結果、前者に対しては72.7+-3.4%、後者で11.2+-3.3%の効率で事象が得られ、カムランド実験装置液体シンチレーター中の^<238>Uの存在量は(3.5+-0.5)x10^<-18>g/g,^<232>Thの場合は(5.2+-0.8)x10^<-17>g/gであることが解った。 原子炉ニュートリノの解析は2.6MeVの閾値で行っているが、先の連続して起こる事象の見かけ上のエネルギーはそれぞれ1.33MeV,0.74MeVになるため、又、カムランド実験装置のエネルギー分解能が6.7%/(E(MeV))^<1/2>であることから、先のような存在量の場合、バックグラウンドとして全く無視できる量であると言える。 次年度以降は、カムランドが^7Be太陽ニュートリノの検出を目指さねばならないことから、連続事象だけでなく単事象でのバックグラウンドも考慮しなければならない。その為に新しい解析方法の確立と、液体シンチレーターの再純化に向けた液体シンチレーター中の放射性不純物量測定装置を開発する予定である。
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Research Products
(1 results)