2002 Fiscal Year Annual Research Report
アップ・ダウン・ストレンジクォークを動的に取り入れた格子QCDの数値的研究
Project/Area Number |
14740173
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Research Institution | The High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
金児 隆志 高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助手 (20342602)
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Keywords | 格子上の場の理論 / QCD / 数値シミュレーション |
Research Abstract |
アップ・ダウン・ストレンジクォークのダイナミクスを考慮した格子量子色力学(格子QCD)の数値シミュレーションは、膨大な計算量を必要とするため非常に時間がかかる。一方、格子QCDの作用には質量次元で高次の項を付け加えることができる不定性があることが知られている。この不定性を利用し、適当に定めた高次項を加えて物理量のO(a)(aは格子間隔)の格子間隔依存性を取り除くようにすれば、比較的粗い、すなわち、格子点の少ない格子でシミュレーションを行うことができる。これによって、計算結果の精度を損なうことなく、数値シミュレーションに必要な時間を大幅に短縮することができる。今年度は、O(a)の格子間隔依存性を取り除くための格子作用を、数値的な非摂動計算によって決定した。 また、上記の作用を用いてアップ・ダウン・ストレンジクォークのダイナミクスを考慮した数値シミュレーションを比較的大きな格子で行い、ハドロンとクォークの質量を計算する研究に着手した。 この研究の現在までの途中結果によると、アップ・ダウン・ストレンジクォークのダイナミクスを取り入れて計算したハドロンの質量は、誤差がまだ大きいものの、実験値と一致している。またアップ・ダウンクォークの質量の平均値は約3MeV、ストレンジクォークの質量は約80MeVという結果を得た。 QCDから計算したハドロンの質量とその実験値が一致していることは強い相互作用による物理が低エネルギー領域においてもQCDによって正しく記述されていることを示唆している。計算結果の誤差を小さくし、実験値との一致をより厳密に検証することが今後の課題である。
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Research Products
(1 results)