2次元電子をプローブとした超流動ヘリウム3表面でのアンドレーエフ反射の研究

2003 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 14740222
• Research Institution: The Institute of Physical and Chemical Research
• Principal Investigator: 池上 弘樹 独立行政法人理化学研究所, 低温物理研究室, 研究員 (70313161)
• Keywords: ヘリウム3 / P波超流動 / アンドレーエフ反射 / ウィグナー結晶 / 秩序変数 / 超低音 / 表面量子現象 / リプロン

Research Abstract

超流動ヘリウム3はP波超流動ゆえ秩序変数に内部自由度がある凝縮相であり、この内部自由度は境界での現象に大きく反映される。この内部自由度により、特に界面近傍での素過程であるアンドレーエフ反射には、S波超伝導では見られない多様性が生まれることが予想されている。このアンドレーエフ反射の研究に対して超流動ヘリウム3上に形成されたウィグナー結晶の伝導度測定が有効であると考えられ、伝導度測定はアンドレーエフ反射の研究の新たなプローブになりうる可能性がある。そのためにはウィグナー結晶の伝導度を100μKという超低温領域という極限温度まで測定するテクニックを確立しなければならない。そこで本年度の第一の目標を、実験セルを核断熱冷凍装置に設置し100μKまでの冷却テストを行うこととした。
冷却装置である核断熱冷凍機は、^3He-^4He希釈冷凍機の部分に重大な問題があり、立上げ作業は非常に遅れてしまった。しかし、平成15年度1月の段階ではその問題点も改善され、急ピッチで立上げ作業は進んでおり平成15年度3月までには核断熱冷凍機の試運転を行う予定である。
また、液体ヘリウム3の100μKまでの冷却および液体ヘリウム3の温度の決定のために特に注意を払って昨年度に作製した実験セルで、来年度初めには測定が開始できる予定である。当初の計画より遅れはあるものの、来年度にはアンドレーエフ反射の現象で、P波超流動に特有な側面が明らかになると期待でき、新たな研究成果につながると考えられる。