2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14740223
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田嶋 尚也 独立行政法人理化学研究所, 加藤分子物性研究室, 研究員 (40316930)
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Keywords | 有機導体 / ナローギャップ半導体 / 電荷秩序 / 光伝導度 / 易動度 |
Research Abstract |
我々は一群の有機伝導体に見られる温度に依存しない電気伝導性について研究を進めていき、高圧下のα-(BEDT-TTF)_2I_3とその類縁物質は有機・無機物質含めて全く新しい電気伝導特性をもつ有機ナローギャップ半導体であることを見出した。 有機ナローギャップ半導体の特徴は、室温から1.5Kまで約6桁も強く温度変化するキャリア濃度と易導度とが相殺して温度に依存しない電気伝導度をもつことである。低温では10^<15>cm^<-3>程度の低キャリア濃度、10^6cm^2/V.s程度の高易導度の状態にある。しかし何故、6桁にもおよぶ担体濃度と易導度の温度変化が低温まで相殺してフラットな電気伝導性を示すのか未だ明らかでない。 一方で、常圧下α-(BEDT-TTF)_2I_3とその類縁物質の低温相は電荷秩序絶縁体状態である。そこで有機ナローギャップ半導体と電荷秩序状態との問に何か相関があるのかを探索することが彩電気伝導現象解明の鍵となると考えられた。 低温絶縁体状態に電子または正孔の担体を導入することができれば、そのときの電気伝導性の変化を調べることで有機ナローギャップ半導体と電荷秩序状態との相関を探索することができる。本研究では電荷秩序絶縁体状態にパルスレーザー励起による光担体を導入することを試みた。 低温(4K以下)・パルス高電場下で試料α-(BEDT-TTF)_2I_3に波長450nmのナノ秒パルスレーザを照射して生じる光電流の時間発展性を測定した結果、驚いたことに電荷秩序絶縁体は融解して大電流が流れるようになり金属転移を見出すことができた。 本研究の成果で最も重要な点は、光を切った後に巨大電流応答をもつ新たな金属状態が出現し、長時間保持する現象を有機導体では世界で初めて観測したことである。これは光による絶縁体-金属間のスイッチングが起きていることを示し、有機デバイスの発展に大きな影響を与えるものと期待される。
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Research Products
(3 results)