2004 Fiscal Year Annual Research Report
非磁性原子からなるナノスケール磁性体の物質設計と物性解明
Project/Area Number |
14740227
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
岡田 晋 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 講師 (70302388)
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Keywords | フラーレン / 化学修飾 / ナノ磁性体 / 密度汎関数理論 |
Research Abstract |
密度汎関数理論に基づく第一原理電子状態全エネルギー計算を種々のナノスケール炭素物質に適用し、その基底状態の電子構造と安定な幾何構造の解明を行った。特に、サッカーボル状の非常に高い対称性を持つC60分子に対して、フェニル基、メチル基を5回対称のもとでサイト選択的に化学修飾した、フラーレンシャトルコックの安定構造、電子構造を明らかにした。この物質は実際実験的に合成が報告されており、また、興味深い事にこのフラーレンシャトルコックが一つの方向に配向して一次元結晶を組む事が示されている。本研究では、はじめにフラーレンシャトルコック分子の電子構造を幾つかの化学修飾基に対して行った。その結果、いずれの修飾基、すなわち、メチル基、ビフェニル基共に分子の基底状態はスピン分極した状態となり、そのスピン密度分布は装着された基に囲まれた、5員環上のπ電子状態の特徴を示している事を明らかにした。次に、この分子が一列に配向した、一次元フラーレンシャトルコックのバンド構造の計算を行った。その結果、各分子の5員環に局在する分極スピンは、近接分子間の弱い相互作用により、反平行にオーダーし、系は一次元の反強磁性鎖となる事が明らかになった。同時に、近接分子間でスピンが平行になる、強磁性状態も準安定状態として存在し得る事が明らかになった。この結果は、フラーレン分子の化学修飾により、炭素原子のみから構成されるナノスケールの磁性材料ユニットが構築可能であり、その分子間の配向をコントロールすることにより、種々の磁気的な秩序を系に引き起こす事が可能である事を理論的に予言し、今後合成を目指すべきナノ磁性物質の候補を明らかにした事で非常に意義深い物である。
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Research Products
(2 results)