2003 Fiscal Year Annual Research Report
生物多様性の維持機構に関する統計力学的・計算物理学的研究
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14740232
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
時田 恵一郎 大阪大学, サイバーメディアセンター, 助教授 (00263195)
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Keywords | レプリケーター方程式 / ロトカ・ポルテラ方程式 / 進化 / 進化 / 大自由度 / 非線形 / 力学系 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、数理生物学を中心とする様々な分野で研究されている生態系モデル(レプリケーター方程式系)の数理的研究を行った。特に、関係している種数が多く、種間相互作用が複雑で多様な系が進化する条件を調べた。 今年度は、種間相互作用がランダム対称行列である大自由度レプリケーター方程式系について調べた。この系は、数理生態学で研究が進んでいるロトカ・ボルテラ(LV)系に変換可能であり、LV系においては、異なる栄養段階にわたる捕食関係、競争・共生関係を持つ大規模で複雑な生態系のモデルと見なすことができる。相互作用の対称性から、統計力学的な解析が可能であり、系の生産力や成熟度に関係する単一のパラメータに対する、共存する種数、個体数の分布、種の豊富さの分布などを解析的に得ることができた。さらに、個体数の分布は、実際の野外研究で観察される、「左に歪んだ」「カノニカル」な対数正規分布に非常に近い形をとることがわかった。生産力パラメータに依存する分布の形の変化も、野外研究での観察と一致していた。これまでの、種の豊富さ分布に関する研究は、単一栄養段階で競争関係にある群集のみに適用可能な理論のみであったが、本研究によってより巨大で、様々な種が共存する群集にも適用可能な理論が初めて構成された。これは、本研究課題にもあるように、統計力学的な視点から数理生態学上の問題に取り組んだことに依る成果であるといえる。また、上記のモデルとは異なるクラスの「反対称」相互作用をもつレプリケーター系の統計力学的定式化についても研究を進めている。こちらでも、野外研究でよく観察され、経験的・統計的にあてはめがなされてきた、いわゆるフィッシャーの対数級数則を解析的に導くことができた。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 時田恵一郎: "タンパク質のデザインおよび進化:生命と物質の間ボトルネックを抜ける"物性研究. 76. 134-145 (2001)
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[Publications] 時田恵一郎: "「はい、複雑な生態系が安定な場合はあります」-30年来の「生態学のパラドックス」への解答-"計測自動制御学会第23回システム工学部会研究会「オープンダイナミクスの諸相」論文集. 22-32 (2001)
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[Publications] 時田恵一郎: "多様性のダイナミクス"物性研究. 77-3. 515-523 (2001)
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[Publications] T.Chawanya, K.Tokita: "Large-Dimensional Replicator Equations with Antisymmetric Random Interactions"Journal of Physical Society of Japan. 71-2. 429-431 (2002)
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[Publications] 時田恵一郎: "複雑さの起源-"拡張された工学"の視座へ-"高温学会誌. 28-6. 309-314 (2002)
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[Publications] K.Tokita, A.Yasutomi: "Emergence of a complex and stable network in a model ecosystem with extinction and mutation"Theoretical Population Biology. 63-2. 131-146 (2003)
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[Publications] 時田恵一郎: "生態学事典(共著、「ランダム群集モデル」担当)"共立出版. 1 (2003)