2002 Fiscal Year Annual Research Report
蛋白質表面に分布する水和水クラスターのダイナミクス
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14740248
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
上久保 裕生 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助手 (20311128)
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Keywords | 水和水 / ダイナミクス / 中性子散乱 / 蛋白質 |
Research Abstract |
近年、低温X線結晶構造解析等の結果から、蛋白質表面は数枚の水和水クラスターによって覆われていることが明らかとなり、それらの水和水クラスターの蛋白質機能に対する役割が注目されている。本申請研究では、この水和水クラスターに注目し、非干渉性中性子散乱測定法を用いて"水和水クラスターの動力学的性質"、さらには、"水和水クラスターの動力学的性質と蛋白質機能との関係"を明らかにすることを目的としている。蛋白質分子は200K付近でガラス転移に類似した動力学的転移が観測される。転移後の蛋白質分子はエネルギーランドスケープ内のLocal minimum間で非調和的な転移が起きていると考えられており、この転移が機能と密接に関係していることが示唆されている。 本年度は、水和水クラスターの動力学的転移と蛋白質の動力学的転移の相関関係を明らかにするために、軽水と重水の中性子非干渉性散乱断面積の違い(H>>D)を利用し、"軽水で水和した蛋白質"と"重水で水和した蛋白質"の非干渉性弾性散乱強度の差分から、水和水クラスターの動力学的転移を観測した。当初計画では水溶性光受容蛋白質(Photoactive yellow protein)をモデル蛋白質として使用する予定であったが、これまでのデータの蓄積が豊富であるStaphylococcal nucleaseをモデル蛋白質として採用することにした。水和水クラスターに相当する散乱強度は蛋白質部分に対して有意な差(約20%)として抽出することができた。抽出した散乱強度の温度依存的な変化調べたところ、>200Kで動力学的転移が観測された。この転移温度はバルクの水のガラス転移温度に比べ大きく、蛋白質に束縛された水分子が観測されていると考えられる。また、水和蛋白質の蛋白質部分の転移温度と比較した結果、両者はほぼ一致しており水和水クラスターと蛋白質の動力学には密接な関係が存在することが示唆された。脱水和蛋白質では、この動力学転移が観測されないことから、水の転移によって蛋白質部分の揺らぎが誘導されていることが示唆された。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Imamoto Y, Kamikubo H et al.: "Light-induced global conformational change of photoactive yellow protein in solution"Biochemistry. 41. 13595-13601 (2002)
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[Publications] Shimizu N, Kamikubo H et al.: "Effect of organic anions on the photoreaction of photoactive yellow protein"J. Biochem.. 132. 257-263 (2002)
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[Publications] Hirano S, Mihara K, Kamikubo H et al.: "The role of C-terminal retion of Staphylococcal nuclease for foldability, stability and activity"Proteins : Struct. Funct. Genet.. 49. 255-265 (2002)
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[Publications] Kataoka M, Kamikubo H et al.: "Neutron inelastic scattering as a high-resolution vibrational spectroscopy"Spectroscopy. (In press).
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[Publications] Mano E, Kamikubo H et al.: "Comparison of the photochemical reaction of photoactive yellow protein in crystal with reaction in solution"Spectroscopy. (In press).
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[Publications] Imamoto Y, Harigai M, Shimizu N, Kamikubo H et al.: "Structure and photoreaction of photoactive yellow protein"Journal of Photoscience. 9. 126-129 (2002)