2002 Fiscal Year Annual Research Report
レーザー励起Ca^+とH_2Oの低エネルギーイオン―分子反応と生成イオンの光解離
Project/Area Number |
14740252
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
岡田 邦宏 上智大学, 理工学部, 助手 (90311993)
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Keywords | Ca^+ / イオントラップ / イオン-分子反応 / H_2O / 共同冷却 |
Research Abstract |
[概要] 平成14年度には、当初の研究計画に従い(A)レーザー誘起蛍光質量分析法(LIFMS法)による極微量なCa^<+*>(D_J)+H_2O反応生成イオンの検出 (B)Ca^<+*>(D_J)+H_2O→products反応速度定数の測定 を行った。実験(A)ではレーザー冷却されたCa^+イオンを利用して、Ca^<+*>(D_J)+H_2O反応生成イオンの共同冷却実験を行った。共同冷却されたイオンの温度はCa^+の蛍光スペクトル線幅から推定し、少なくとも200Kまで冷却されていることを確認した。またLIFMS法による測定からCa^<+*>(D_J)+H_2O反応による生成イオンがCaOH^+又はHCaOH^+であることを確認した。しかし分解能の限界から質量数を特定するには至らなかった。質量数の特定を行う実験は現在進行中である。一方、本研究で採用したLIFMS法の特徴を生かし、超高真空領域でのCa^<+*>(D_J)+H_2O反応の有無を確認する実験を行った。残留H_2O圧力が約10^<-8>Paという極低圧下においてCa^<+*>(D_J)+H_2O反応が検出されるかどうか測定を行った結果、反応時間〜2×10^3s以上において質量数M=57〜58付近に有意な質量スペクトル信号を確認でき、励起状態であるCa^<+*>(D_J)は基底状態Ca^<+*>(S_<1/2>)に比べてH_2Oとの反応性が非常に高いことを実験的に明らかにした。 LIFMS法は生成イオンに対する検出感度が高いが、定量的測定には向いていない。そこで上記実験(B)では、光ポンピング法を用いて、バッファーガス冷却下におけるCa^<+*>(D_J)+H_2O→products反応速度定数を測定を行い、反応速度定数が〜10^<-11>cm^3s^<-1>のオーダーであることを明らかにした(例えばイオン温度T=3.1(1)×10^3Kにおける反応速度定数はk=1.8(1)×10^3s^<-1>Pa^<-1>である)。また、反応速度定数の温度依存性を測定し、Ca^<+*>(D_J)+H_2O反応が低温であるほど反応速度が増すことを示した。実際に測定を行ったイオン温度領域(T=1000〜5000K)においては約2倍の反応速度の増加が観測されている。以上の成果はJ. Phys. B36(2003)33-46に公表した。
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Research Products
(1 results)