2003 Fiscal Year Annual Research Report
海域総合構造調査の3次元波形解析による地震断層面物性不均質の解明
Project/Area Number |
14740259
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
望月 公廣 東京大学, 地震研究所, 助手 (80292861)
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Keywords | プレート境界 / 地震活動 / 速度構造 / 物性 / アスペリティー / S波 / 変換波 / 構造調査 |
Research Abstract |
本研究では、2001年8月から10月にかけて宮城県沖日本海溝陸側海域で行われた海域総合構造調査に関して、特にS波速度構造をより詳細に求めるための手法の開発を進めながら解析を行っている。本海域では、1996年のより小規模な調査から、プレート境界でのP波反射の振幅と地震活動との間に非常に良い逆相関が認められた場所である。これについて、プレート境界に存在する水の量との関係が指摘されているところである。これに対し本研究で昨年度までに、S波の反射がほとんど一様に見られないことを発見した。本年度は、このS波のプレート境界反射波の振幅について、より詳しい解析・議論を行った。主たる議論は以下の2点についてである。 1)エアガン震源はP波的な縦波しか発振しない。S波は、主に堆積層と岩盤との境界においてPS変換波として励起される。この変換効率が悪い場合は、そもそもS波成分は励起されない。S波が観測されないのは、この変換効率が悪いためではないか。 2)P波と、PS変換によって励起されたS波でのプレート境界に対する入射角の違いにより、プレート境界の反射係数がS波の方が小さく、S波の反射が観測されないのではないか。 これに対し本研究では、PS変換によるS波の屈折波成分が観測されていることiを確認し、また昨年度に求められているP波速度、S波速度構造、および推定密度構造から、十分なS波成分が励起されていることを示した。また、P波とS波のプレート境界反射では、両者はほぼ同じ波線を通り、すなわちプレート境界に対する入射角は差がないことがわかった。この場合、プレート境界における反射係数についてはむしろS波反射の方が大きいということを求めた。これより、S波反射が観測されないことについては、プレート境界において何らかのS波の反射を抑制するシステムがあるということを示した。
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