2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14740272
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古恵 亮 東京大学, 気候システム研究センター, 助手 (30311640)
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Keywords | 北大西洋深層水 / 南大洋 / 風 / 熱塩循環 / 海洋大循環モデル / ベルトコンベアー |
Research Abstract |
南大洋に吹く風が北大西洋深層水(NADW)の循環を強く制御しているが、その機構を明らかにすべく海洋大循環モデルを用い様々な数値実験を行った。標準実験では、NADWが南大洋に出て行く流量は17Svである。等密度面を横切る流量を詳しく調べた結果、風がある場合でも、4.5Sv程度しか南大洋では湧昇していないことがわかった。風はそのままで、南大洋での海面加熱を止める実験をしてみると、南大洋での湧昇はほぼ止まり、NADWの流量は3sv減った。これは、風そのものではなくて、エクマン輸送によって熱が海洋に加わり、そのため深層水が湧昇させられることで、NADW循環が強化されているとの従来の説に合致する。さらに、NADW循環のうち、その機構による成分は3-4Sv程度であることがわかる。 ところが、南大洋の風を止めると、北大西洋深層水の循環量は8.5Svと半分になってしまう。このことは、従来の二つの説(エクマン輸送そのものが駆動・海面過熱が駆動)で説明されない機構のために、南大洋で湧昇する量以上の感度が出たと言わざるを得ない。その新しい機構とは、南大洋の風を止めると、風があるときには北向きに運ばれていた表層水が南下し易くなり、その結果南極底層水の生成量が増え、相対的にNADWの流量が減る、というものではないかとの仮説を立てた。この仮説はまだ十分に検証できていないので、検証すべく現在研究中である。以上の結果を、仮説も含めて論文にまとめJournal of Physical Oceanography誌に投稿中である。 また、上記の結果は、NADWの多くの部分は、南大洋でではなくてインド洋・太平洋で湧昇しているという、古典的な「ベルトコンベアー」の描像に整合する。そこで、NADW循環の強さがインド洋・太平洋の湧昇に支配されているという仮説を立て、別の数値実験を行った。その結果、インド洋・太平洋での風の強さや拡散係数、またそれらの海の広さに、NADWの循環量が敏感であるという、興味深い結果を得た。この結果は、別の論文にまとめ、やはり同じ雑誌に投稿中である。
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