2004 Fiscal Year Annual Research Report
渦の統計理論に基づいた、大気・海洋における混合効果の推定に関する研究
Project/Area Number |
14740280
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊賀 啓太 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (60292059)
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Keywords | ジェットの蛇行 / 渦列 / 混合 / 渦位 / カオス / 統計理論 |
Research Abstract |
今年度の研究では、ジェットの不安定性から渦列を形成する過程において、混合の及ぶ範囲を明確に記述する方法を提示した。また、この過程におけるカオス的混合の様子に関する数値計算を行った。具体的に得られた結果は以下のようにまとめられる。 1.ジェットが蛇行をして渦列を作る過程を記述する統計理論と数値計算によるシミュレーションの結果の比較により、混合の及ぶ範囲の距離が重要なパラメータとなることが昨年度の研究で明らかになり、数値計算の結果を用いてその混合範囲を示す手法が必要となっていた。本年度は、数値計算によって得られた渦位と流線関数の関係だけでなく、初期における渦位の絶対値というもう一つのスカラー量と流線関数の関係を調べることで、この混合範囲を調べる試みを行った。その結果、正負の渦位の混合によって渦位が0になる領域と混合が及ばずに渦位が0になっている領域とを明確に区別することに成功し、ジェットの混合が及ぶ領域をはっきり示すことが可能となった。 2.ジェットの蛇行に伴って起こるカオス的な混合の様子を、2次元水路モデルの数値計算によって調べた。球面モデル上の同種の実験はこれまでにも行われており、極側と赤道側とで流体の混合が及ばない領域の形成のされ方に非対称性があることが明らかにされていたが、これが、球面のメトリックによるものなのか基本場の渦位勾配の相違によるものかはわかっていなかった。今回の渦位勾配の違いを考慮した2次元水路モデルによる数値実験の結果から、この非対称性が渦位勾配の違いから生じているものであることが明らかとなった。これにより、このようなカオス的な混合を調べる際に、水路モデルが十分に有用であることが示された。 本研究によって、ジェットから渦列を形成する際の、混合の統計的性質のいくつかが整理された。しかし、定量化の作業にはまだ仮定が残っており、完全なパラメータ化を行うためにはこのような性質をさらに調べる必要がある。
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Research Products
(3 results)