Research Abstract |
本年度は,高速気流中での液滴の力学的安定性の解析,コンドリュール形成にとって適切な熱履歴を再現できる衝撃波の光学的条件,などの点についての研究を進めた. コンドリュールの衝撃波加熱形成モデルでは,衝撃波面通過後,ダスト粒子は表面から順に加熱され溶融する.したがって一時的に,表面が液体,内部が固体という構造になることが期待される.このような部分溶融状態の液滴が,高速気流中で力学的に安定に存在出来るのかどうかという問題を,線型化した流体力学方程式を解析的に解くことによって調べた.まず,液体マントル-固体コア構造の粒子のうち,液体マントルの内部流や変形についての解析的な解を求めた.次にこの解を用いて,液体マントルがはぎ取られる条件を調べた.その結果,一般に,粒子のサイズが大きい場合には剥ぎ取りが起きることがわかった.さらに,衝撃波加熱モデルで粒子を加熱できる条件を満たす衝撃波において剥ぎ取りが起きない最大サイズを求めたところ,約1mm程度となることがわかった.これは実際に観測されているコンドリュールの最大サイズとほぼ一致している.したがって,コンドリュールの最大サイズは液滴部の剥ぎ取りによって決まったと考えられる. 一方,コンドリュールを形成するためには適切な熱履歴が必要であると考えられている.従来は,冷却率だけが問題になっていたが,最近,加熱率にも観測的に制限が与えられた.本研究では,冷却率と加熱率の2つが同時に満たされる条件を調べた.その結果,密度が比較的低く衝撃波速度が大きい衝撃波の場合にのみ,両方の条件が満たされることがわかった.これは,コンドリュールを形成をした衝撃波の生成条件を明らかにする上で,極めて重要な知見であると思われる.
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