2002 Fiscal Year Annual Research Report
湖縁辺域での地層形成過程の解明:高密度年代測定からのアプローチ
Project/Area Number |
14740298
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
酒井 哲弥 島根大学, 総合理工学部, 助教授 (90303809)
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Keywords | カトマンズ盆地 / ^<14>C年代法 / 三角州堆積物 / シーケンス層序学 / 湖成堆積物 |
Research Abstract |
湖縁辺で地層が累積する過程を明らかにする目的で,本年度はネパール王国・カトマンズ盆地に分布する湖成堆積物の層序学的研究,ならびにそこから得られた炭質物の年代測定を行った.あわせて,滋賀県に分布する鮮新一更新統古琵琶湖層群の調査を行った.カトマンズ盆地での層序学的な調査からは次のようなことが明らかになった.地表で観察可能な地層の大部分は,湖の縁辺域で形成された三角州堆積物の重なりからなる.その三角州堆積物の特徴は,下位から上位に向けて,場所によらず同じように変化する様子が認められた.下位では湖水準上昇時に局所的に累積する三角州平野堆積物と湖水準安定時に前進した厚いデルタフロント堆積物で特徴づけられる.上位ではデルタフロント堆積物の厚さが薄くなり,広域的に類似した地層が見られる.最上位では三角州の発達が見られなくなり,盆地の縁辺部に薄い崖錘堆積物のみが見られる.年代測定の結果は1万7千年前から5万4千年前の間の年代が得られた.比較的連続した年代値が得られた層準について見てみると,上位堆積時ほど水位の上昇速度が小さくなったことが読めた.すなわち,下位層準で局所的に地層が累積するのは,湖水準の上昇が速いためにシステムの側方移動が起こらず,それ以前の三角州のつくる地形的高まりの上を優先的に堆積物が埋積をしたため,上位で連続性のよい三角州堆積物が見られるのは,湖水準上昇速度が遅くなり,小さな三角州システムの側方への移動が頻繁だったためと考えられる。とくに上位層準では水位の上昇速度が遅くなったことが読みとれたが,それにも関わらず前進型の地層が形成されていないことは,堆積物の供給そのものが減少したことを意味する.その水位の上昇が世界的な気候変動の傾向と全く同調していないことから,堆積物供給減少の原因としては気候などの外的な要因ではなく,水位の上昇に伴う後背地の面積の減少という内的な要因が影響している可能性が指摘される.
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