2003 Fiscal Year Annual Research Report
分子凝集および液滴粉砕による分子ナノクラスターの気相合成とその物性解明
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14740332
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
三井 正明 慶應義塾大学, 理工学部, 助手 (90333038)
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Keywords | ナノクラスター / 光電子分光 / 負イオン / 溶媒和電子 / 負イオン / ポリアセン |
Research Abstract |
極性有機分子や多環式芳香族分子で構成されるナノクラスター負イオンの電子状態を、光電子分光法を適用することによって明らかにし、以下に述べるような成果を得た。 1)アセトニトリルナノクラスター負イオン:(CH_3CN)_n^-(n=10-100)における余剰電子の局在状態 (CH_3CN)_n^-において"溶媒和電子"状態とアセトニトリル分子が2量化反応することによって生成した"ダイマー負イオン"状態とが共存していることを発見した。光電子スペクトルの観測からn【less than or equal】10では溶媒和電子状態のみが存在するのに対し、n【greater than or equal】11になるとダイマー負イオン状態が発現し、これら二つの負イオン種の共存することが確認された。これらの負イオン種の同定は、電子脱離断面積の光子エネルギー依存性、ホールバーニング光電子分光、理論計算などから行った。本研究から、最も代表的な極性溶媒の一つであるアセトニトリルにおいて、特異的な電子構造異性体の共存が明らかにされた。 2)ポリアセンナノクラスター結晶における分子ポーラロンの形成 ナフタレンやアントラセンなどのポリアセン化合物の巨大クラスター負イオンを形成し、光電子分光法により余剰電子の存在状態を解明した。構成分子数が30分子程度までの小さなクラスターでは、余剰電荷により誘起される周辺分子の分極安定化が最大とするような構造形態を持つクラスターのみが形成した。ところが、クラスター粒径が約2nmになると分子内振動構造を明瞭に示す新たな状態の形成が確認された。これは電荷周辺の分子が電荷に対してほとんど構造緩和していないことを意味し、100個以下のポリアセン分子の自己集合によって、バルク単結晶に類似した固体的な状態が実現されることを初めて見出した。またこのナノ結晶では、余剰電子が分子間を高速移動している可能性も考えられ、ポリアセン高純度単結晶において観測される高い電荷キャリアー移動度と関係した"分子ポーラロン"の微視的な状態であると推測される。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Masaaki Mitsui, Naoto Ando, Shinsuke Kokubo, Atsushi Nakajima, Koji Kaya: "Coexistence of Solvated Electrons and Solvent Valence Anions in Negatively Charged Acetonitrile Clusters,(CH_3CN)_n^-(n=10-100)"Physical Review Letters. 91. 153002-1-153002-4 (2003)
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[Publications] 三井 正明, 中嶋 敦: "気相ナノクラスターの材料化を目指したソフトランディング技術とナノデザイン"化学工業. 55・1. 7-12 (2004)
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[Publications] Masaaki Mitsui, Keizo Takeda, Yasuhiro, Kobori, Akio Kawai, Kinichi Obi: "Unusually Large Dynamics Electron Polarization in an O_2(^1Δ_g)-2,2,6,6-Tetramethylpiperidine-1-oxyl Radical System"Journal of Physical Chemistry A. 108. 1120-1126 (2004)
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[Publications] Masaaki Mitsui, Yasuhiro, Kobori, Akio Kawai, Kinichi Obi: "Quenching Mechanism of Excited Coronene by a Nitroxide Radical Studied by Probing Dynamic Electron Polarization"Journal of Physical Chemistry A. 108. 524-531 (2004)
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[Publications] Naoto Ando, Shinsuke Kokubo, Masaaki Mitsui, Atsushi Nakajima: "Photoelectron Spectroscopy of Pyrene Cluster Anions,(Pyrene)_n^-(n=1-20)"Chemical Physics Letters. (in press).